春らしく暖かくなってきました。しかし私は花粉が辛く,医者にもらった薬を毎日飲んでいます。夕食後に飲む薬には,やや強めの睡眠剤も入っているので,よく眠れていいです。
コロナ禍が変わらず猛威を振るっていますが,それが社会に及ぼした影響を可視化できるデータが公表されてきています。最もいいのは,自殺者の数です。自殺統計には,警察庁と厚労省のものがありますが,細かい属性別の数を知れるのは後者です。先日,2020年の厚労省統計が公表されました。「地域における自殺の基礎資料」というものです。
自殺日に基づく年間自殺者ですが,2019年では1万9974人でしたが,2020年では2万907人に増えています。年間自殺者が前年に比して増えたのは,リーマンショック以来だそうです。性別にばらすと,増えているのは女性です(男性は微減)。女性の自殺者は,6052人から6993人に増えています。
自殺者の数は男性が多いですが,前年と比した増加率は女性で高し。この事実から,コロナによるダメージは,女性で大きいのは明らかです。非正規の雇止め,巣ごもり生活に伴う役割増加など,様々なことが言われています。先日の朝日新聞記事によると,女性研究者の論文生産数が,コロナが渦巻いて以降減っているそうです。家庭での役割が増加したためとのこと。
コロナは,日本社会の矛盾を「これでもか」というくらい,露わにしてくれます。ジェンダー不平等は,その最たるものですよね。昨年の自殺増加が,もっぱら女性であることに,それははっきりと表れています。
年齢を絡めると,以下のようになります。上記の資料から2019年と2020年の数字を採取し,整理しました。
右端の倍率を,折れ線グラフで視覚化すると以下のようです。ツイッターで発信したところウケていますので,ここに再掲いたします。
若い女子の自殺増加。コロナの影響ゆえであるのは明白ですが,具体的事情について,友人と会えない孤独だとか,将来の見通しが暗くなったとか,果ては巣ごもり生活による性被害の増加とか,様々なことが言われています。
なるほど,どれももっとものように思えますが,憶測では心もとないので,データで正確さをちょっとばかり期してみましょう。参照するのは,自殺の動機統計です。これは,警察庁の自殺統計に出ています。それぞれの動機カテゴリーに当てはまる自殺者数を計上しています(遺書等から動機が判明した者に限る)。複数の動機に当てはまる自殺者もいますので,数値は延べ数です。
ダメージを受けている20歳未満を取り出し,男子と女子に分け,2019年と2020年の動機別自殺者数を対比すると,以下の表のようになります。
さて,際立って増加率が高い学校問題ですが,細目をみると,「進路の悩み(入試以外)」という動機の自殺が11人から31人に増えています。数としては少ないですが,この手の悩みが女子高校生の間で広がっているとみられます。やはり,将来展望閉塞が大きいようです。
中高年層では,自殺率は失業率と非常に強く相関しますが,若年層では将来展望不良と強く相関する。これは前に,データで示したことがあります。前途ある若者は,見通しの暗さを苦にするものです。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/09/post-94451.php
男子では,「進路の悩みに」による自殺は2019年から20年にかけて減ってます。しかし女子ではかなり増えている。コロナによる将来展望閉塞には,性差があることに注意しないといけません。考えてみれば,「コロナで家計が悪化したんで,大学進学を諦めろ」と言われるのは,男子より女子で多いでしょう。
しかし今では,大学等の学費無償,給付奨学金支給など,支援は充実してきています。夜間の課程は,学費も安いです。進路とは,ある意味「情報戦」です。一人で思いつめる(途方に暮れる)ことがないよう,相談を促し,こういう手立てもあると情報提供をすることが求められます。
コロナ自殺は,若い女子に集中している。このファクトを詰めてみると,将来展望閉塞という事情が大きいことがうかがわれます。それは,当人を孤立させることなく,大人がきちんと目配りすれば防げる性質のものでもあります。教師は,いろいろな進路の選択肢(生き方)に関する知識を得ておくことです。