初っ端から暗い話題が続きました。少し向きを変えましょう。
2008年7月7日の朝日新聞は,「若者の海外旅行離れ加速」と題する記事を掲載しています。その原因として,「カネなし,好奇心も薄れた?」ということがいわれています。前者の原因は仕方がないにしても,後者についてはいかがなものでしょう。国際化・グローバル化が進行するなか,若者の海外への関心が薄れるというのは,問題であるとする向きが強いようです。
はて,現在の日本人は,どれほどが海外渡航しているのでしょうか。法務省は『出入国管理統計』を毎年作成していますが,それによると,2007年の出国者数はおよそ1729万人だったそうです。同年の人口に占める比率は13.5%です。バブル期の1990年の8.9%よりは増加しています。では,年齢層別にみるとどうなのでしょうか。
出国者率の社会地図によりますと,率が最も高いのは,20代後半であるようです。しかし,そのピークは1995年から2000年にあり,最近では,上記の記事がいうように,率が下がっています。今後,どうなっていくのでしょうか。若者の巣籠り傾向は増していくのでしょうか。しかるに,下川裕治『日本を降りる若者たち』講談社現代新書(2007年)という本では,ギスギスとした日本を捨て,海外での生活に癒しを求める若者が描かれています。また,海外での生活にハマる「外こもり」という言葉も流布しているくらいです。
このような海外志向は,若者の一種の脱社会傾向といえなくもありません。現在のわが国は,若者を遇していませんので。出国率は,社会の危機兆候を測る指標としても使えるかもしれません。