2013年12月26日木曜日

90年代以降の若者の自殺(国際比較)

 以前は,WHOの“ World Health Statistic annual ”という資料に,各国の年齢層別の自殺者数が載っていたのですが,近年のものにはそれがないので,どうしたことかと思っていました。

 どうやら最近では,死因の国際統計は,WHOホームページの“Mortality Database”で提供されているようです。下記サイトで条件を指定することにより,目的の情報を得ることができます。自殺は,“Intentional self-harm”です。
http://apps.who.int/healthinfo/statistics/mortality/whodpms/

 私はここから,1990年以降の25~34歳の自殺者数を,主要国の分だけ取り出してみました。日韓米英独仏の6か国です。6つの社会の若者の自殺者数は,下表のように推移してきています。


 日本をみると,この20年間で若者の自殺者は2,160人から3,550へと増えています。倍率にすると1.6倍です。お隣の韓国は3倍近くなり。今,この国の若者は大変だそうですが,それは自殺者数にも表れています。
http://dametv.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-5fec.html

 しかるに,他の4か国では,若者の自殺者は減少をみています。ドイツに至っては,1,922人から912人へと半減以下です。若者にとっての「失われた20年」は,国際的にみて普遍なものではないのですね。

 念のため,25~34歳人口で除した自殺率の推移も掲げておきましょう。計算に使うベースの人口も,上記のWHOデータベースにて得ることができます。いやはや便利。


 ベース人口を考慮した自殺率でみても,この20年間で上昇傾向にあるのは日韓だけです。「若者の危機」がいわれて久しいですが,それは社会によって一様ではないことが知られます。「若者が大変なのはどこの国も同じだ」と政治家が口にするのを見たことがありますが,そういう弁明が果たして正しいのかどうか・・・。

 はて,世界的にみてイレギュラーなのは日韓の2国なのか,それとも欧米の4国なのか。この点を知るには,比較の対象をもっと広げる必要があります。より多くの社会について,90年代初頭と最近の自殺率を出し,両者のマトリクス上に各々を散りばめた布置図をつくれば,事態はクリアーになるでしょう。後々の課題にしようと思います。