「47都道府県の子どもたち2012」プロジェクトの最終回です。これまで3回かけて,発育(病),能力,および逸脱という3側面を測る9つの指標をもとに,各県の小・中学生のすがたを診てきました。今回は,これらを総動員した総合診断を行うことにいたしましょう。
下の表は,各回で提示してきた9指標の相対スコアの一覧です。1~5位を10点,6~10位を9点,11~15位を8点,16~20位を7点,21~25位を6点,26~30位を5点,31~35位を4点,36~40位を3点,41~45位を2点,46~47位を1点,としています。マックスの10点は赤色にし,全県の最高値には黄色のマークを付しました。
9つのスコア値をレーダーチャートの形でグラフ化すると,各県の子どもの多角診断カルテができあがります。私は,秋田と東京のカルテをつくってみました。
図形の型が大きく違っていますね。秋田は,能力の3指標はいずれもマックス(10点)ですが,東京は,この部分が凹んでおり,逸脱の部分が突き出ています。
右下には,各項目の3指標のスコアを均した簡易カルテを掲げています。個々の具体的な指標よりも,どの部分が課題であるのかを大まかに知りたいという方は,こちらをご覧いただくとよいかと思います。
ここでは全県のカルテをお見せすることはできませんが,カルテの型は県によって多様です。上表の元データを使って,ご自分の県ないしは関心のある県のカルテをつくってみてはいかがでしょう。エクセルでグラフ化してもよし,方眼紙で作図してもよしです。
最後に,3観点・9指標のスコアを均して,子どもの状態の良し悪しを測る総合スコアを出してみようと思います。数値が高いほど好ましいという意味合いを持たせるため,発育(病)と逸脱の6指標のスコアは反転させます。10点を1点,9点を2点,・・・1点を10点とします。能力の3指標のスコアはそのままです。
このように変換した9指標のスコア平均をして,子どもの状態を総合的に測るスコアといたしましょう。下の表は,この数値が高い順に47都道府県を並べたものです。
トップは富山です。秋田かと思いましたが,当県では虫歯や肥満の率が高いことがネックとなったみたいですね。郷里の鹿児島は20位,首都の東京は35位なり。
発育・能力・逸脱という観点からした,小・中学生のすがたの総合評価スコアです。各県の関係者諸氏の参考に与するところがあれば幸いに存じます。むろん,粗雑な部分も多く含んでいますが,教育測定の向上・発展に向けた議論の足がかりとなることをも願うものです。
ちなみに,2008年に刊行した拙著『47都道府県の子どもたち』(武蔵野大学出版会)では,全県分のカルテを掲載するとともに,各県の子どもをとりまく環境の診断も手掛けております。興味ある方はお手にとってください。割引販売もいたしております。