2014年2月1日土曜日

子育て期における人口増加率地図

 昨日の読売新聞が報じたところによると,2013年中の転出超過が全国一だったのは,神奈川県の横須賀市だそうです。とりわけ転出が多いのは子育て世代とのこと。これに対し市長は,「誠に遺憾。転出の抑制と転入の促進の方策を打ち出したい」とコメントしています。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20140131-OYT1T00535.htm?from=tw

 前にどこかで書きましたが,ヒトの動き(mobility)というのは正直です。水が高きから低きに流れるがごとく,魅力的な地域には人が入り,そうでない所からは人は出ていくというのは道理です。

 私はこういう考えのもと,子育て期における人口増減を,都内の49市区別に明らかにしてみました。計算したのは,20代後半から30代前半にかけての人口増加率です。この値が高いほど,子育てに選ばれている地域という見方をとります。

 参照したのは,『住民基本台帳による東京都の世帯と人口』という資料です。現在公表されている最新の数値は,2013年1月時点のものです。この時点の30~34歳人口は,5年前の2008年1月では25~29歳ということになります。
 http://www.toukei.metro.tokyo.jp/juukiy/jy-index.htm

 この2つの数値を照合することで,同一世代(コーホート)について,20代後半から30代前半にかけての人口増減を明らかにすることができます。下の表は,都内49市区別の結果一覧です。


 子育て期における人口増加率が最も高いのは,中央区となっています。20代後半では9,477人だったのが,30代前半になるや14,034人にまで膨れ上がっています。増加率にすると,実に+48.1%にもなります。1.5倍近くの増加です。

 2位は台東区の40.3%,3位は港区の39.3%なり。人口増加率という単純な指標ですが,これでみる限り,子育てに選ばれている地域といえるかもしれません。

 なお,赤色は増加率が10%を超える数値ですが,ほとんどが都心ではないですか。子育ては自然が多い地域でのびのびと。こんなふうに考える人が多いかと思いますが,そうでもないのかなあ。

 西部では,人口が減っている地域もあり,私が住んでいる多摩市に至っては10.4%の減でワーストです。多摩市は公園面積が首都圏で1位であり,子育てにはうってつけの環境だと思うのですが。ちと複雑な気持ちです。
http://tmaita77.blogspot.jp/2013/01/blog-post_30.html

 子どもができたら,家庭の時間を多く持ちたいということで,通勤時間が短くなる都心が選ばれるのでしょうか。あるいは,早期受験などを見越してとことでしょうか。まあ好みは人それぞれですのでとやかくは申しませんが,ちょっと意外でした。

 私は視覚人間ですので,上表の増加率を地図化しておこうと思います。4つの階級を設けて,49市区をグラデーションで塗り分けてみました。


 東高西低が明瞭ですね。特別区(23区)ではほとんどが10%以上の増ですが,西部では白色,すなわち人口減の地域も結構あります。

 大雑把にみればこんな感じですが,各市区の人口増加率は,子育て施策による部分も大きいと思われます。ある方がツイッターで教えてくださったところによると,「中央区に流入が多いのは 待機児童が比較的少ないこと,出産祝い金(3万)があることなんかがありそう」とのこと。また,「移動教室の際,保護者の方からの集金は賄い費(食事代)だけでした。バス代も宿泊費も区からお金が出ていました」という経験談もお聞きしました。なるほどなあ。
 http://www.city.chuo.lg.jp/kosodate/index.html

 繰り返しますが,ヒトの動きというのは正直です。今回出した,子育て期における人口増加率のような指標は,各地域の子育て施策の効果を評価するメジャーとして使えるでしょう。経年変化にも関心を向けていただきたいものです。