最近では,文科省『学校基本調査』の進路統計でも,就職者を正規と非正規に分けて集計しています。就職率が高いといっても,「ほとんどが非正規なんじゃねーの?」と突っ込まれますしね。まあ,精緻な統計が作成されるのはいいことです。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
この恩恵を利用し,今回は,大卒者の正規就職率という指標を計算してみようと思います。性別や専攻別の数値も出してみることにしましょう。正規就職率の出し方ですが,私は,以下の計算式がいのではないかと思います。
(正規就職者数+臨床研修医数)/(卒業生数-進学者数-専門学校等入学者数)
就職の意思のない大学院進学者や専門学校入学者は,分母から除きます。分子に臨床研修医を加えるのは,医療系の専攻の場合,キャリアが研修医から始まるのが一般的であるからです。
このやり方で,2013年春の大卒者の正規就職率を計算すると,男子は74.1%,女子は74.9%となります。男女とも4分の3くらいですが,女子のほうが若干高いのですね。需要が高まっている福祉系の専攻で女子が多いためでしょうか。
では,男女の正規就職率を専攻系列別に出してみましょう。下表はその一覧です。
全専攻でみると4分の3ほどですが,専攻によってかなり違っています。マックスは男女とも保健系であり,男子は87.0%,女子は90.9%です。医学や看護を修めた学生ですが,このご時世。やっぱり強いですねえ。
一方,正規就職率が最も低いのは芸術系であり,男女とも半分を割っています。アーティストや作家志望で,敢えて就職に背を向ける学生さんが多いのか。まあ,これもよろし。次に低いのは教育系ですが,これは教員採用試験の再トライ組が多いためでしょう。
表を全体的にみると,予想通りといいますか,おおよそ「理高文低」の傾向が見受けられます。
あと,どの専攻でも男子より女子の正規就職率が高いのも特記点です。5ポイント以上の差には不等号をつけましたが,理学系では,10ポイント近くもの開きが出ています。リケジョへの需要の高まりとみられます。
次に,上記の大雑把な専攻系列よりも下った,細かい小専攻ごとの率も出してみましょう。人文科学系の下には,文学,史学,哲学,およびその他という4つの下位専攻があります。私は,こうした小専攻別の正規就職率を計算してみました。男女いずれかの卒業生数が50人に満たない専攻を除いた,56の専攻です。
高い順に並べたランキング表をつくってみましたので,それをご覧いただきましょう。まずは男子のものです。
上位は,理系の専攻のオンパレードですね。1位は看護学,2位は医学。やっぱ強い。文系の主な専攻にはマークをしましたが,全体平均(74.1%)を超えるのは,商学・経済学だけです。
続いて女子のランク表です。構造は,男子とほぼ同じです。
このランク表を専攻選びの参考にしろというのではありませんが,社会の人材需要はどういうものか。その一端を見て取ることができる気がします。
最後に,56専攻の男女の正規就職率を視覚化しておきましょう。私は視覚人間ですので,こういう「締め」をしたくなります。横軸に男子,縦軸に女子の正規就職率をとった座標上に,56の専攻を位置づけてみました。点線は,全体値です。
これが,専攻別の正規就職率の布置図です。あなたが志望する,あるいは在学している専攻はどこに位置しますか。
こういう図も,高校の進路指導室の壁に貼ってみたらどうでしょう。拡大したら,結構インパクトありそうです。