2019年2月8日金曜日

熱中症,凍死による死者数

 明日から3連休ですが,今年最強の寒波が襲ってくるそうです。北海道ではマイナス22度,危険な寒さです。鼻水が凍ります。当地にお出かけになる方は,防寒対策をしていきましょう。

 ここ横須賀も,明日は3度までしか上がらないとのこと。雪もチラつくようなので,週末のお楽しみの長井水産には行けそうにありません。

 ここ数年,夏は異常な暑さによる熱中症が問題化されていますが,冬場には凍死があります。前者は異常な高温,後者は異常な低温に晒されることで起きるものですが,数としてはどちらが多いのでしょう。

 厚労省『人口動態統計』の詳細死因分類に,「自然の過度の高温への曝露(X30)」,「自然の過度の低温への曝露(X31)」というカテゴリーがあります。前者は熱中症,後者は凍死による死亡とみてよいでしょう。

 この数字を拾うと,2017年中の熱中症死亡者は635人,凍死死亡者は1371人となっています。数としては,凍死のほうがずっと多いのですね。倍以上の差です。こういうマイナーな死因は年による変動が大きいと思われますが,どの年でも,熱中症より凍死が多いのでしょうか。ネットでは,『人口動態統計』の詳細統計は1999年まで遡れますので,この年から2017年までの推移をまとめてみました。


 年による凹凸はありますが,熱中症・凍死による死者は,大まかには増加の傾向にあります。人口の高齢化により,抵抗力の弱い高齢者が増えているためでしょう。

 両者の数を比べると,2007年と2010年を除く年で,凍死のほうが多くなっています。先ほど述べたように,最新の2017年の死者数は,熱中症が635人,凍死が1371人です。

 数の上では凍死が多いのに,問題化されている度合いは熱中症のほうが高し。これは,熱中症は全ての人に関わる病だと認識されているからでしょうね。凍死は,雪山に挑んで遭難するとか,泥酔して路上で寝込むとか,当人の過失による部分が大きい,と思われていると。

 しからば,凍死者には若者が多いように思われますが,どうなのでしょう。2017年の死者数の年齢カーブを描くと,以下のようになります。


 予想に反して,凍死は高齢者で多くなっています。ほぼ9割が60歳以上の高齢者です。無茶をしがちな若者の凍死者はわずかしかいません。

 もう一つ,われわれの予想を裏切る統計的事実があります。凍死が起きる場所は,屋外ではないのです。2016年の『人口動態統計』の内部保管統計に,死因小分類と死亡場所のクロス集計表があります。これをもとに,熱中症と凍死の死亡場所の内訳表を作ってみました。


 どうでしょう。2016年の凍死者1093人のうち,最も多いのは自宅での死者数です。その数414人で,全体の4割近くを占めています。遭難したとか,路上で寝込んだとか,そういうのがマジョリティではないのですね。

 屋根があり,雨露をしのげる屋内でも凍死は起こり得る,いやこちらがメインであると。明日から北海道は危険な寒さになるそうですが,こんな土地で,布団をかぶらないで寝たら危ないでしょう。気温11度で命を落としたケースもあるとのこと。寒さの感覚が鈍くなる高齢者は要注意(老人性低体温症)。
http://news.livedoor.com/article/detail/14319574/

 日本の「家のつくり」も問題なんでしょうね。ある方がツイッターで教えてくれたのですが,徒然草で「家の作りやうは,夏をむねとすべし。冬は,いかなる所にも住まる」と言われているそうです。湿度が高い日本では,古来から,住居は夏向けに作られてきたと。海外はそうではなく,ヨーロッパではレンガ造りの住居が主で断熱性に優れています。ドイツでは,寒い家を貸した家主は裁判で負けるのだそうです。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190206-00185115-hbolz-soci

 家の造りも,見直さないといけないですね。それと暖房代です。夏場の冷房代もかかりますが,額としては冬の暖房代のほうがかかります。冷房が使えず熱中症で亡くなった高齢者の事件がよく報じられますが,暖房をつけられず極寒の室内で凍死した事件も起きているはず。基本的人権(生存権)を保証する範疇として,空調代は生活保護において支給しないといけません。

 「住」は生活の基盤です。まっとうな家に住みたいというのは,誰もが願うところ。夏場で熱中症が問題化していますが,冬場の凍死についても,もっと注目されてよいでしょう。学校ではどうなのでしょう。極寒の日に,半袖・半パンの体操着で体育の授業を遣るなどという愚は,そろそろ止めにしてほしいものです。