2020年7月17日金曜日

働く人の年齢・所得の分布

 更新が滞ってますので,最近ツイッターで出している,風変わりなグラフについて書いておきましょう。

 今の日本の就業者は6400万人ほどで,国民の半分強が働くことで社会は成り立っています。働く人には,若い人もいれば年輩者もおり,給料が高い人もいればそうでない人もいます。2017年の『就業構造基本調査』のデータで,就業者の年齢(5歳刻み)と年間所得(100万円刻み)を掛け合わせてみると,最も多いのは「20代後半・所得200万円台」のグループです。その数,およそ163万人。就職して間もない若き正社員でしょうか。

 15の年齢層と,11の所得階層で分けた165グループの人数をグラフで表現すると,以下のようになります。円の大きさで,各グループの人数を表しています。細かい数値は知れませんが,年齢と稼ぎという観点でみた,労働者の組成を見て取れます。


 ドットが大きいのは人数が多い群ですが,稼ぎが少ない人が多いんだなという感じです。全労働者6408万人のうち,所得400万未満の人が4343万人と7割近くを占めています。私もこのラインに達してませんが,最近よく言われる「安いニッポン」がよく表れています。

 年齢も加味すると,若い・安い労働力に社会は支えられていることが分かります。上述のように,最も多いのは20代後半・所得200万円台の群です。人口の高齢化もあってか,60代の安い労働者も結構いますね。今後,この層はますます増えてくるでしょう。

 男性と女性に分けると,分布の様相はかなり違っています。25~54歳の生産年齢層にスポットを当て,男女のグラフを並べてみると,以下のようになります。


 どうでしょう。男性では200万未満の層は少ないですが,女性では多くなっています。男性は,年齢が上がるにつれて高所得層の円もやや大きくなってきますが,女性はさにあらず。アラフィフになっても,所得800万以上の人なんて豆粒ほどしかいません。

 昇給のジェンダー差ですね。男性は昇給していきますが,女性は逆で,中年期以降では低所得層の円が大きくなってきます。結婚・出産で正社員を辞し,家計補助のパート勤務に回る人が多いからです。

 日本の給与のジェンダー差は,雇用形態の差によるものと思われがちですが,そうじゃありません。正社員同士で比しても,円の大きさの配置はかなり違っています。それは以下の図をみると分かります。厳密さをもう一段期すため,学歴も揃えています(大学・大学院卒)。高学歴正社員のジェンダー比較です。


 女性でも,200万未満のプアは少なくなりますが,男性との差は残っています。大卒正社員でも,800万超の層は豆粒ほどであるのは同じです。男性にあっては,アラフィフの大卒正社員となると,1000万プレーヤーが最も多くなるというのにね。

 大卒の正社員同士を比べてもコレです。1000万超のドットの年齢変化に,昇給のジェンダー差がくっきりと出ています。従業地位と学歴を統制しても残る,まぎれもないジェンダーの差です。まさに「ガラスの天井」。

 差別的な賃金体系もですが,既婚女性が家事・育児との兼ね合いから,バリバリ稼ぐのが難しくなるのが大きい。昨今の未婚化の進行は,女性にとっての結婚の損失が大きくなっている故だと私は思っています。女性の高学歴化,正社員化が進んでいる状況ではなおのこと。

 しからば,それを抑えるしかありません。その要となるのは,保育所を増やすことなんですが,保育士の処遇改善を訴える要望が各地で起きています。国は,即座にこれに応えるべきです。