2月14日の記事では,人文科学系の博士号取得者の数を明らかにしました。しかるに,当該の専攻は,博士課程全体の中ではそれほど大きなウェイトを占めるものではありません。他の専攻の動向も気になるところです。
文科省『学校基本調査(高等教育機関編)』によると,2010年3月の大学院博士課程修了者は15,842人です。そのうち,単位取得退学者は4,035人です。よって,課程修了による博士号取得者数は,前者から後者を差し引いて,11,807人となります。この数は,1990年では3,790人でした。
1991年以降の大学院重点化政策の影響もあってか,この20年の間に,博士号取得者(課程修了による。以下,同じ)は,3倍に増えたわけです。様相を専攻別に観察すると,下の表のようになります。
私は教育系の博士課程を修了しましたが,当該の専攻の博士号取得者数は,この20年間で8.1倍になっています(25人→202人)。ほか,増加倍率が大きいのは,人文科学系(6.0倍),社会科学系(8.0倍),芸術系(18.1倍),です。複合領域の「その他」に至っては60.3倍です。
文系と理系という大雑把な括りでいうと,前者の博士号取得者数の伸びが大きいことが知られます。1990年では,博士号取得者の93.3%が理系専攻者(理学,工学,農学,保健)で占められていました。ですが,2010年では,この比率は74.9%まで減じています。
1990年から2010年までの変化の様相を,逐年で細かくみてみましょう。私は,各専攻について,1990年の博士号所得者数を100とした指数の推移をとってみました。指数値がぶっ飛んでいる「芸術系」と「その他」は除いています。
社会科学系(赤)と教育系(桃)の増加が目立っています。保健や理学といった理系の専攻は,右上がりの傾斜がなだらかです。「博士号=研究者としてのライセンス」という位置づけが,文系にも浸透してきていることがうかがわれます。
とはいえ,博士号取得者の増加が著しい人文系,社会系,教育系において,修了者の死亡・行方不明率が高いことは,前回の記事でみたとおりです。
次回は,博士課程修了者の組成(博士号取得者or単位取得退学者)がどう変わってきたかを,専攻別にみてみようと存じます。人文系については2月14日の記事で明らかにしましたが,他の専攻ではどうかが注目されます。