世には無数の夫婦が存在しますが,仕事と家事という役割の担い手が夫か妻かによって,大雑把なタイプを設定することができます。
夫が仕事で,妻は家事ないしは家計の補助的な意味合いの仕事(パート等)という夫婦は,お馴染みの伝統的夫婦といえましょう。双方とも仕事をしている夫婦は,共働き夫婦です。
あと一つは,伝統的夫婦と役割分担が反対で,妻が仕事,夫が家事という夫婦です。こちらは,ニュータイプの非伝統的夫婦と呼ぶことにしましょう。
私は,総務省の『国勢調査』にあたって,上記の3タイプの夫婦が数でみてどれほど存在するかを明らかにしました。最近の『国勢調査』の公表データは詳細になっており,夫と妻の労働力状態をクロスさせた夫婦数の統計表が出ています。2010年調査でいうと,第2次集計の全国結果の表25です。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/index.htm
これを使って,各タイプに属する夫婦数を明らかにした次第です。追試をしたいという方もおられると思いますので,原表のどの部分の数字を拾ったのかを示しておきます。
説明は要りますまい。赤色のセルは伝統的夫婦,青色は共働き夫婦,黄色は非伝統的夫婦に相当します。
下表は,夫が20~40代である夫婦のタイプ内訳を整理したものです。その他は,合計から3タイプを差し引いた分です。最近5年間の変化も分かるようにしました。
夫が20~40代である夫婦数は,この5年間で1,197万から1,138万へと少し減っています。未婚化の影響でしょう。
内訳をみると,夫は仕事,妻は仕事という夫婦が最も多くなっています。しかるに変化でいうと,このような伝統的夫婦の数は実数・比重ともに減じており,代わって共働き夫婦の数が増えてきています。2010年では,全体の3割が共働き夫婦なり。近年の男女共同参画政策も効いていると思われます。
あと一つ,夫が家事,妻が仕事という非伝統的夫婦ですが,このタイプは量的にはマイノリティーです。しかし,この5年間で1.5万から2.2万へと増えており,比重も微増しています。2010年の出現率は0.196%,510夫婦に1夫婦というところです。量的にはわずかですが,このニュータイプの夫婦が増えていることは注目されてよいでしょう。
二神さんの『ニートがひらく幸福社会ニッポン』明石書店(2012年)の中で,小学校教員の女性と結婚し,ヒモで生きる覚悟を決めたニート男性の事例が紹介されていました。また,先日のプレジデント・オンラインの「2050年の日本人の働き方」という記事には,「妻のほうが収入も出世の可能性も高いので,主に家事と育児を担当するのが私の役割」という夫の話が載っていました。
http://president.jp/articles/-/10320
人口減少の局面をむかえている日本社会において,働くのに男も女もありますまい。加えて,偏狭なジェンダー観念も揺らいできています。これから先,ここで設定したような非伝統的夫婦はますます増えてくることと思います。2015年の国調では,もしかすると5万を越えていたりして。
先ほど掲げた,「夫の労働力状態×妻の労働力状態」の夫婦数の統計表から,従来型とは違う,いろいろなタイプの夫婦を取り出すことが可能です。たとえば,言葉がよくないですが,夫がニートで妻がフルタイム就業の「ヒモ夫婦」とかはどうでしょう。夫(⑧)×妻(①)のセルの数字を拾えばいいわけです。
巷でいわれていることを数値で可視化すること。私の趣味の一つです。ちょっと涼しくなりました。気温の変化に,体調を崩されぬよう。