誰にも看取られずに死んでいく・・・。近年,注目を集めている孤独死ですが,その量が統計で表現されることはあまりないようですので,ここにてそれをしてみようと思います。いずれも,官庁統計のデータを加工して作成したものです。
まず,全国で起きている孤独死の近似数(相似数)ですが,厚労省「人口動態統計」の死因統計の死因カテゴリーに,「立会者のいない死亡」というものがあります。死亡時に立会者がおらず,死因を特定できない者です。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1.html
2013年のデータで見ると,同年中の当該カテゴリーの死亡者は2371人となっています。同年10月時点の総人口(1億2730万人)で除すと,人口100万人あたり18.6人という出現率です。この2371人の性別・年齢別内訳をグラフにすると,下図のようになります(年齢不詳は除く)。
ピークは60代前半で,女性より男性が圧倒的に多くなっています。女性のほうが,人づきあいの頻度が高いためでしょう。60代の前半で最も多いのは,退職から年金支給開始までの無収入期で,生活に困窮するためでしょうか。
次に,この数で測られる孤独死の量が,過去からどう推移してみたのかをみてみましょう。人口変化を考慮するため,各年の死者数をベース人口で除した出現率の推移をたどってみます。厚労省の統計には,都道府県別の数値も出ていますので,大都市の東京の時系列カーブも描いてみました。
わが国の孤独死率は増加の傾向にあります。よくいわれる,孤族化・孤独死化の様相がデータで可視化されています。とくに大都市の東京ではそれが顕著で,今世紀になってから,孤独死の発生率が5倍以上に増えています。やはり,人間関係が希薄な大都市で多いのですね。
ここで観察しているのは,死亡時に立会者がおらず,死因を特定できない死亡者の出現率ですが,死因を特定できた者も含めたら,値はもっと高くなります。
なお,大都市・東京の内部でも,孤独死の発生率の地域差があります。指標が異なりますが,東京都監察医務院の孤独死統計を使って,この点も明らかにしてみましょう。この資料でいう孤独死とは,自宅で死亡した,単身世帯の異状死者のことです。異状死とは,内因か外因か,はっきりとした死因を特定できない死を意味します。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kansatsu/kodokusi25.html
上記の資料には,この数が都内の23区別に掲載されています。これを各区の15歳以上人口で除して,23区の孤独死発生率を試算してみました。分子は2013年中の死亡者数,分母は同年1月1日時点の人口です。
人口10万人あたりの孤独死者数にして,それを地図にしてみました。大都市という地域特性を同じくながらも,孤独死の発生率は区によってかなり違っています。最高の豊島区は,最低の千代田区の倍以上です。
また,色が濃い高率地域がある程度固まっているのも注目されます。個々人の個別事情を超えた,孤独死の社会的規定性のようなものを感じさせる図柄です。
その一端をご覧にいれましょう。3月1日の記事にて,都内23区の平均世帯年収を計算したのですが,この指標と,上記の孤独死発生率の相関図を描いてみました。
年収と孤独死発生率の間には,有意な負の相関関係がみられます。年収が低い区ほど,孤独死の発生率が高い,という傾向です。これは,貧困と孤独死の相関のマクロ表現といってよいでしょう。
経済資本と社会関係資本は連動するといいます。自分の惨めな状況を親族や知人に見られたくない。それで,他者との関係を一切断ち切って引きこもってしまう・・・。こういう面もあるのではないでしょうか。
このような現象は前からあったものなのか,それとも近年固有のものなのか。この点にも興味が持たれます。私は,後者ではないかという仮説を持っています。それが検証されたら,ここにてご報告いたします。