2015年7月19日日曜日

人物重視の県はどこか

 全国で教員採用試験が実施されている最中ですが,1次試験が終わって胸をなでおろしている受験者も多いことでしょう。しかし油断は禁物。最近は人物重視の考えが強まり,筆記ではたくさん通すものの,面接でバンバン落とす自治体が増えていると聞きます。

 私の頃は,「筆記さえ通れば,後はよほどのヘマをしない限り落とされることはない」とか言われてましたが,近頃はそうではないのでしょうね。しかるに,教員採用試験の実施主体は各自治体であり,人物(面接)をどれほど重視するかは,自治体によって異なるでしょう。

 私は,最新の小学校教員採用試験結果のデータをもとに,各都道府県の人物重視度を測ってみました。受験者のみなさんの参考になればと思います。

 参照したのは,東京アカデミーのホームページです。下記サイトにて,小学校教員採用試験の①受験者数,②1次試験合格者数,③最終合格者数が県別に掲載されています。私はここから,最新の2015年度試験(昨年夏実施)のデータを収集しました。

 各県の①~③の数値を眺めると,教員採用試験の実施タイプは多様であることが知られます。面接重視の県もあれば,筆記重視の県もあり。手始めに,対照的な2県の様相をみていただきましょう。下の図は,神奈川と沖縄の3つの数値を,正方形の面積で表現したものです。


 お分かりかと思いますが,神奈川は筆記ではたくさん通すものの面接でガンガン落とすタイプ,沖縄は筆記でうんと絞って面接ではほとんど落とさないタイプです。前者は人物重視,後者は筆記重視の典型です。

 ここでの関心は,人物重視の程度を数値で可視化することですが,それは,面接試験での不合格者が,不合格者全体の何%を占めるかで表されます。以下の式です。

 人物重視度 = 面接試験での不合格者数/不合格者全体 = (b-c)/(a-c)

 これに従うと,神奈川と沖縄の試験の人物重視度は,以下の数値で測られます。

 ・神奈川= (1133-474)/(1616-474) = 57.7%
 ・沖縄 = (261-223)/(1482-223) = 3.0%

 神奈川では不合格者の6割が面接で落とされているのに対し,沖縄ではわずか3%です。後者の南国では,筆記さえ通れば後は楽勝?の感があります。

 それでは,他の県のデータもお見せしましょう。3つの元数値(a~c)と,算出された人物重視度の一覧表です。黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。


 右端の面接重視度は,県によってかなりのバラツキがあります。最高は大分の61.9%,最低は先ほどみた沖縄の3.0%です。大分は,2007年頃,教員採用試験の不正で問題になった県ですが,最近では人物志向が最も強い県であることが知られます。

 ほか,人物重視度が高いのは,赤字の北海道,神奈川,愛知,大阪,といった府県です。不合格者の半分以上が面接で落とされています。

 その一方で,沖縄や愛媛のように,1次の筆記でほぼ勝負がついてしまう県もあり。教員採用試験の実施タイプって,ホント多様であると思います。

 様相を分かりやすくするため,右端の人物重視度(不合格者中の面接脱落者の比率)が高い順に各県を並べたランキングにしてみましょう。


 左上の自治体の受験者は,筆記が終わったからといって,まだまだ気は抜けません。1次はほんの小手調べで,これからが勝負の本番です。

 来年の試験の受験者で,右下の自治体を希望する人は,筆記試験の万全を期しておく必要があるでしょう。教職教養でいうと,福島は難しいですよ~。選択肢を与えない空欄補充問題がメイン。学習指導要領の原文や主要法規の条文を,しっかり暗記しておかねばなりません。拙著『教職教養らくらくマスター』(実務教育出版)にて,赤シートの学習を繰り返しやっていただければと思います。来年実施の2017年度試験向けの本は,来月下旬に出る予定です。

 ところで今回のデータは,試験の受験者だけの参考に与するものではありません。試験の実施者の側は,ここにて観察された試験の実施タイプの分化によって,採用される教員のパフォーマンスがどう異なるか,という問題を吟味する必要があるでしょう。子どもの学力上位の秋田や福井は,どちらかというと筆記重視型のようですが・・・。

 今回出したデータが,教員採用試験の受験者・実施者の双方にとって参考になれば幸いに思います。