一つは「本アカ」,二つは「裏アカ」,そして三つは「趣味アカ」とのこと。裏アカは,言いにくいことをつぶやく。趣味アカは,友人に知られたら恥ずかしいような趣味のネタをつぶやくと・・・。
どのアカウントにログインしているかで,当人の人格はさぞ変わっていると思われますが,こんな使い分けにどっぷり浸かっていると人格分裂が起きややしないかと,いささか不安になります。ツイッターの利用頻度別に,中高生の人格測定をした研究とかないかしら。
それはさておき,SNSは彼らにとって交友の重要なツールです。思春期以降になると,心地よい居場所は家族から仲間集団にシフトしてきます。そこでの交わりが,当人の思想や行動にも影響します。この時期に「重要な他者」は,親ではなく仲間です。
それだけに交友は重要なのですが,現在では,ケータイやスマホといった小型の情報機器を介したやり取りが主流です。これがないと,つまはじきにされることもあるでしょう。
データでみても,中高生のケータイ・スマホ非所有群と所有群を比較すると,後者のほうが友人の数は多くなっています(内閣府『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』2013年)。
しかるに,友人関係の質をみると,違った側面が出てきます。中高生男女のケータイ・スマホ所持状況と友人関係の満足度をクロスすると,以下のようになります。
男子では差はありませんが,女子では,非所有群よりも所有群において,友人関係に不満を感じる者の割合が有意に高くなっています(p < 0.05)。
女子にあっては,所有群のほうが友人数は格段に多いのですが,その質はよろしくないと。友人に嫌われまいと,四六時中スマホを眺めている子が多いと聞きますが,そういうことに疲れ切っていることもあろうかと思います。
女子ではケータイ・スマホの所有率が高いだけに,こういう病理がはびこっているとみられます。
スマホはいつでもどこでも情報を受信・発信できる便利な機器ですが,使い方を誤ると,自分を苦しめる凶器になり得る。大人が,適切な使い方を指導する必要があります。
フランスでは,終業以降の仕事関係のメールは無視してよいという,「つながらない権利」が認められているそうですが,こういう敷居を設けることも考えられてよいでしょう。ネットのつながりは,時間的にも空間的にもエンドレスですから。
あと一点,使い分けているアカウントの数が多い子ほど,友人関係の不満度は高いのでは。表と裏の顔(人格)の落差が大きくなるわけですし。この点について,実証データがあればなと思います。所有・非所有の2区分ではなく,使用のレベルとのクロスも取りたい。
上記のデータは,昨年10月5日の日本教育新聞コラムで紹介したものですが,某地方県の高校の先生から「非常に興味深い」という感想をいただきました。冒頭の東洋経済オンライン記事をみて,思い出した次第です。ブログにも掲載し,関係者の皆さんの議論に供したいと思います。