総務省統計局が『日本統計年鑑』という資料を毎年出しています。あらゆる分野の統計が網羅された,公的な総合統計書です。
私は学生の頃,図書館でよく見ていました。黒いハードカバーで700ページほどだったかな。必要箇所に付箋をはさみ,えっちらおっちらコピー室に運びコピーをとって,必要なデータをせっせとエクセルに入力し,グラフにしていました。
今は,全部ネットでみることができます。統計表はエクセルでアップされてますので,入力の手間も要りません。必要なデータを自分のエクセルにコピペし,加工すればよし。便利になったものです。
最近,ちまちまと細かいデータばかりをいじっているので,大きなマクロ統計に立ち返ろうと思いました。その最たるものは人口統計です。上記資料の「人口」というチャプターをみると,過去から現在までの人口の長期推移が出ています。20世紀初頭の数年間は以下のごとし。
1900年は和暦だと明治33年ですか。この頃は人口が4400万人ほどしかいなかったのですね。しかし人口は右上がりで,戦前期は毎年,人口が50~70万人ほど増え続けていました。
今から100年以上前の話ですが,上記のデータを現在,さらには未来まで延ばすとどうでしょう。グラフで表してみますが,視覚化したいのは,右欄の「前年からの増減」です。社会の勢いを見て取るには,こっちのほうがベターでしょう。人口推移のグラフは,いろんな所で出てますしね。
1945年に戦争が割った直後は,帰還兵や団塊世代の誕生により,年間の人口増加が大きくなっています。1949~50年の1年間では,8177万人から8412万人へと234万人の増加。スゴイですね。
その後,凹凸しながらも,高度経済成長期にかけて人口増加の時代が続きます。均すと,年間100万人増のペースです。まさに日本社会が成長する時代でした。人口が1億人を突破したのは1967(昭和42)年のことです。
しかし70年代前半(団塊ジュニア誕生)をピークに,人口増のペースは低下に転じます。出生数が減り,死亡数が増加に転じたからです。その傾向は続き,ついに2005年,対前年の人口がマイナスを記録します。人口減少時代の幕開けです。
人口減少の速度は速まり,2017~18年の1年間では53万人減りました。「1年間で人口53万人減!」という見出しがメディアに踊ったので,ご存知の方は多いでしょう。言わずもがな,少産多死の時代になっているからです。
グラフを右に目を移していくと,2020年代以降,50万人,70万人,さらには100万人減る時代になると予想されます。たった1年間でです。あまりピンとこない人がおられるかと思いますが,人口50~100万の大都市が毎年ごっそり無くなっていく,といえば分かりやすいでしょう(私が住んでいる横須賀市は39万人)。ある論者の表現を借りると「静かなる有事」です。
日本は国土が狭いので人口が減ってもいいじゃん,という声もあります。ですが問題なのは,人口の中身です。そう,バリバリ働ける生産年齢人口が少なくなり,体力の弱った高齢者が多くなります。
上記グラフの終点である2060年をとると,日本の人口は9284万人で,そのうちの38.3%(A)が65歳以上の高齢者になると予測されます。国民の4割が高齢者になると。人口は減り続け,2055年から2060年の5年間の人口増加率はマイナス3.73%(B)です。
Aは老いの指標,Bは社会の勢いの指標と読めます。この2つをとった座標上に,世界の各国を位置づけてみましょう。さらにもう一ひねり加え,ドットの大きさで人口量も表してみます。国連の人口推計サイトからデータを呼び出しました。
https://population.un.org/wpp/
ドットの大きさをみると,人口首位はインド,2位は中国,3位はナイジェリアです。日本は,この頃には世界の人口ランクが20位まで転落します(現在は11位)。
横軸は人口の高齢化率,縦軸は人口増加率です。上述のように,前者は老い,後者は社会の勢いの尺度と読めます。左上は,若くて勢いのある社会です。ほとんどがアフリカの諸国です。今後の世界の人口は増え続けますが,増分の多くはアフリカの国々によります。世界の3人に1人がムスリムになるなんていう予測もありますね。女性に厳しい宗教ですが…。
中ほどをみると,先進国のアメリカやイギリスは,2060年になっても人口増を保つことが見込まれます。中国は,この頃には人口減少社会に仲間入りです。この大国が外国人材を欲するとなったら,争奪戦がさぞ激しくなるでしょう。
さて日本はというと,右下のゾーンにあります。老いて,勢いのない社会です。その極地は,お隣の韓国となっています。
今から40年後の国際社会の布置図ですが,いかがでしょうか。この頃の日本は,5人に2人が高齢者で,毎年人口が100万人減っていくような社会です。今のレベルの生産活動が行えているかどうか。機械化,ICT化,そして移民の受け入れを極限まで進め,何とか国の体裁を保っているのでしょうか。
昨日のニューズウィーク日本版に「日本はもはや後進国であると認める勇気を持とう」という記事が出ています。そうでしょうね。日本の若者は,「ずっと自国に住み続けたい」と考える人の率が他国に比して高いですが,いつまでもつか未知数です。異国で暮らしを立てる術を持っておくのも大事です。
https://twitter.com/tmaita77/status/1140960468812599297
お隣の韓国は,「一定期間,外国に住みたい」「自国と外国を往来して住みたい」という回答が多くなっています。日本の若者より,先を見据えた現実的な考えを持っていますね。