人口を吸い尽くしている大都市の東京ですが,今年7月の人口移動統計では,転出超過に変わったのだそうです。転入者よりも転出者の方が多くなった,ということです。
しかし,新聞に出ている転出超過数だけを見ても,事情は分かりません。コロナ渦の中,「密」な東京は御免と,出ていく人が増えたのか。それとも入ってくる人が減ったのか。転出超過数は,転出者と転入者の差分ですが,私は原資料に当たって,この2つの要素を揃えてみました。
資料は,総務省の『住民基本台帳人口移動報告』です。毎月の人口の流出入が都道府県別に出ています。東京都の転入者数と転出者数を,2019年1月から2020年7月まで辿ってみると,以下のようになります。
転出者も昨年の同時期と比して減っています。しかし転入者の減少幅の方が大きいので,結果として転出超過数は増えています。巨大都市の東京は,「転入>転出」が常なんですが,今年の4月以降は吸引力が低下し,5月に初めてプラスに転じ,7月は2522人の転出超過となっています。
東京が転出超過に転じたのは,入ってくる人が減ったことによるみたいです。コロナ渦の東京に飛び込むのは,「飛んで火に入る夏の虫」であると。
では,どういう層で転入者が減っているのか。この点を出してみると,事態にもうちょっと迫れます。以下の表は,7月の年齢層別の転入者と転出者を,2019年と2020年で比較したものです。
要素を上表にて明らかにしましたので,転出者から転入者を引いた転出超過数の年齢グラフを作ってみましょう。
転出超過の幅が,30代で大きく増えているのが分かります。東京からの転出超過のピークは,乳幼児を別にすれば,退職を機に郷里に帰る人が多い60代前半になるのが常ですが,今年は30代に変わっています。
子どもを抱えた働き盛りの層ですが,在宅勤務の推奨の中,職住近接志向が低下し(転入減少),かつ広い住居でテレワークや子育てをしようという考えが強まっているためではないでしょうか(転出増加)。
大都市・東京の人口移動統計から,働き方志向の変化が見て取れます。7月に明らかな転出超過に転じたのですが,これが8月,9月,さらにはずっと続くのか。注目される所です。