私は単身者で会社勤めでもなく,地域づきあいもしませんので,生活のほぼ全部を1人で過ごしています。家族,職場,地域という縁から隔絶されているわけです。会話の仕方も忘れそうです。
若い頃は平気でしたが,40代半ばにさしかかり,こういう状況がキツくなっていることはツイッターでつぶやき,昨年の総括記事でも書きました。これではいけない,まずは地域での人間関係をちょっとでも築こうという意図から,夕刻のウォーキングでは自分から挨拶をする頻度を増やし,市のウォーキングクラブの行事にも参加しようと思っています。
孤独というのは,物理的に1人でいる「孤立」とは区別されます。独り身であっても,人間関係が豊かで「自分は独りぼっちではない」と思っている人は孤独ではありません。孤独とは,あらゆる人間関係の縁から隔絶されていて,「自分は独りだ」と自覚を持っていることでしょう。これはヤバい状態で,英国では孤独対策の省も設けられています。
孤独な人はどれほどいるか。これを測るのは容易でないですが,内閣府の『満足度・生活の質に関する調査』(2020年)の調査票を眺めてみると,問19にて,「困った時,頼れる家族や友人がいない」という項目に当てはまるか否かを訊いています。「困っても頼れる人はいない,やはり自分は独りだ」と思っていることになりますので,この項目に当てはまる人のパーセンテージに注目するのもいいでしょう。
調査対象15歳以上の国民1万5574人で,サンプル数は十分です。この人たちを男女,10歳刻みの年齢層に分け,「困った時,頼れる家族や友人がいない」という人の率を計算しました(個票データの加工による)。以下の図は,結果をグラフにしたものです。
うーん,自殺率や餓死率のピークと一致していますね。自殺とは孤独の病とは,よく言ったものです。飽食の国・ニッポンにおいて,餓死に追い込まれるというのも,社会関係資本が乏しいからに他なりません。
仕事一辺倒の中高年男性の居場所は会社。ひとたびそこを切られると,途端にあらゆる関係から隔絶されます。「金の切れ目が縁の切れ目」ってことで家族を失い,地域に人間関係もないので,孤独のリスクが非常に高くなる。ワークライフバランスが歪であるのは,危ういことだと思います。
上記のパーセンテージを使って,各年齢層の孤独者数の近似値を出してみましょうか。2020年10月時点の各年齢層の人口に,上図の比率をかけてみます。さあ,どうなるか。
家族や友人に頼れる人がいない,しからば第三者が手を差し伸べなければならず,今後はそういうサービスへの需要が増すでしょう。たとえば,賃貸契約の緊急連絡先代行です。最近は,連帯保証人は立てなくてもいいと言われますが,緊急連絡先は必須です。それを代行する会社もあるようで,私も近い将来,お世話になるかもしれません。
日本はこれまで,助け合いは「私」依存でしたが,「公」の比重も高めていかないとなりますまい。