2011年8月19日金曜日

男性の離別者率

 7月22日の記事にて,配偶関係別の自殺率を出したところ,離別者の自殺率が際立って高いことを知りました。自殺予備軍といっては語弊がありますが,自殺に最も傾きやすい離別者は,人口のどれほどを占めているのでしょうか。

 近年,離婚率が高まっていることからして,離別者は,実数でみても比率でみても増えていることと思います。離別者とは,離婚という理由により,現在は配偶者を持たない者のことです。

 2010年の『国勢調査』の抽出速報結果によると,男性の15歳以上人口5,315万人のうち,離別者はおよそ189万人です。よって,離別者の比率は,189/5,315≒35.6‰となります。千人あたり35.6人という意味です。%にすると3.56%です。約分すると,28人に1人ということになります。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001032402&cycode=0

 この離別者率を,年齢層別に計算してみましょう。時代の変化を知るため,1950年と2010年の統計を比較してみます。下の表をご覧ください。


 まず,15歳以上人口全体の離別者率をみると,1950年では8.9‰でした。2010年の値(35.6‰)は,その4倍に相当します。離婚率の高まりを受けてのことでしょうが,人口中の離別者の比率はかなり上昇していることが分かります。

 年齢層別にみると,1950年では,離別者率が際立って高い層はみられませんが,2010年では,50代あたりの中高年層において,率が目立って高くなっています。40代後半から60代前半では,50‰(=5%)を超えています。自殺率が高い年齢帯と合致しています。

 はて,いつ頃から,中高年層に離別者が集中するようになったのでしょう。私は,1950年から2010年の期間について,5年おきに,上表の5歳刻みの離別者率を出しました。その結果を,上から俯瞰することのできる図をつくりました。例の社会地図です。このブログを長くご覧頂いている方はお分かりかと思います。


 今世紀以降,50代を中心とした中高年のゾーンに,50‰を超える黒い膿(うみ)が広がっています。1980年までは,どの年齢層でも離別者率は20‰未満でした。中高年層を中心に,離別者の比率が伸びてきたのは,80年代の半ばあたりからです。男女雇用機会均等法が施行されたのは1986年ですが,女性の社会進出と関連があるのでしょうか。

 離別者の自殺率が高いことの原因としては,配偶者に去られることに加え,子どもにも去られるという,ダブルパンチの影響も大きいことでしょう。わが国では,単独親権制がとられていますので,夫婦のいずれかが子どもと強制的に引き離されることになります。

 このことは,子どもの発達上よろしくないということから,離婚後も両親が共に親権を持つことを認める共同親権制の導入が提言されているところです。子どもの権利条約第9条第3項も,「子どもの最善の利益に反しないかぎり,定期的に親双方との個人的な関係および直接の接触を保つ権利を尊重する」ことを求めています。

 このような措置は,子どもの権利保障という点のみならず,離別者の自殺防止という点においても,要請されるのかもしれません。