失業率とは,働く意欲のある労働力人口のうち,職に就けていない者(完全失業者)がどれほどを占めるかを表す指標です。この失業率には,大きな地域格差があるものと思われます。
47都道府県別の結果については,さまざまなところで公表されているようですが,それよりも下った市区町村単位の数字はあまり明らかにされていないようです。あるにしても,特定の県内のものだけというケースが多いように思います。ここでは,47都道府県内の全市区町村の失業率を一括して出した結果をご覧に入れましょう。自地域の失業率の水準が,全体の中のどの辺りに位置づくかを知るための資料として利用してくだされば,と存じます。
総務省統計局『統計でみる市区町村のすがた2011』には,2005年における全国の1,750市区町村の労働力人口と完全失業者数が,一つの表にまとめて掲載されています(下記サイトの表F)。同年の『国勢調査』の数字です。必要な数字をエクセルにコピペし,割り算をして,各市区町村の失業率(%)を出しました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001032195&cycode=0
全国値は6.0%ですが,1,750市区町村の失業率を出すと,最低の0.0%から最高の19.4%まで,大きな開きが観察されました。下図は,1,750市区町村の失業率の度数分布をとったものです。市区と町村の組成が分かるようにしてあります。
最も多いのは,5%台の階級です。この階級に,全体の26.6%(およそ4分の1)が収まっています。失業率が10%を超えるのは,72地域で,全体の4.1%に相当します。予想されることですが,失業率の高い地域のほとんどは,町村です。地域に就業機会が乏しいためと思われます。
最も上の階級(15%以上)の含まれる地域の数は6です。上位3位は,福岡県・川崎町(19.4%),沖縄県・嘉手納町(17.5%),沖縄県・本部町(15.6%),です。失業率が最高の川崎町では,働く意欲のある労働人口のうち,およそ2割が職を得ていないことになります。19.4%といったら,全国値(6.0%)の3倍以上です。
この地域の失業率を年齢層別に出し,全国水準と比較してみると,下表のようになります。
川崎町では,10代後半の失業率が46.7%にも達しています。働く意欲がありつつも,職にありつける確率はおよそ半分ということです。若年層の失業率が高いのは全国的な傾向ですが,当該地域の絶対水準の高さには目を見張るものがあります。
全国値との差が比較的大きいのは,40代後半から50代前半の中高年層であるようです。4倍を超えています。また,川崎町では高齢層の失業率が高いことも目を引きます。この地域では高齢化が進んでいることを考えると,高齢層の失業率の高さが,地域全体の失業率の高さとなって表れているのかもしれません。
失業率が10%を超えたら一大事だなどとよくいわれますが,この水準に既に達している地域がいくつかあることを知りました。まあ,これらの地域はすべて農村的な性格を持っている地域ですので,地域内での相互扶助なども,比較的うまく機能すると思われます。
怖いのは,人間関係が希薄で,こうした機能が期待できない都市的な地域において,失業率が高まることです。都市的な地域のデータだけを使って,失業率と自殺率の相関をとったら,クリアーな正の相関が出てくるかもしれません。最近は,自殺率についても,細かい市区町村別の数字が得られるようです。手がけてみたい分析課題です。
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/kyouka_basic_data/h21/chiiki.html