児童相談所という機関をご存じでしょうか。児童福祉に関する相談に応じ,必要に応じて,当該の児童や家庭に対し調査や指導を行う機関です。2011年7月1日時点でみて,全国に206あります。均すと,一つの県につき4~5というところです。
2009年度の厚労省『福祉行政報告例』によると,同年度中に児童相談所に寄せられた相談の件数は368,539件だそうです。1997年度間では,326,515件でした。相談件数が増えていることが知られます。
上記の厚労省の資料では,子どもの年齢別に相談件数が集計されています。2009年度に寄せられた相談のうち最も多いのは,14歳の子どもに関連する相談です。その数は24,989件で,全体の6.8%を占めています。14歳といったら,思春期の只中に位置する難しいお年頃です。それだけに,子育てにまつわる保護者の苦労や悩みも多い,ということでしょう。
なお,一口に相談といっても,いろいろな事由があります。私は,①児童虐待,②障害,③非行,④性格行動,⑤不登校,⑥育児・躾,⑦いじめ,に関する相談の件数を,子どもの年齢別に明らかにしました。
これらの事由に関連する相談件数は,どの年齢の子どもで多いのでしょう。まずは,7つの事由の相談件数を年齢別に累積した面グラフをご覧ください。
7つの事由による相談件数の累積が2万件を超えるのは,3歳,5歳,13歳,および14歳です。奇しくも,発達心理学がいうところの,第一次反抗期と第二次反抗期に該当します。
ちなみに,事由の内訳は,どの年齢でも障害が多くを占めるのですが,12~15歳あたりでは,非行,性格行動,ならびに不登校といった事由の比重も大きくなっています。児童虐待関連の相談は,低年齢の子どもで多いようです。
次に,各事由の相談件数が年齢別にどう分布しているのかをみてみましょう。こうすることで,それぞれの年齢の子どもが抱える危機の様相が,よりいっそうはっきりします。私は,各事由の相談件数の年齢別構成比(%)を出し,年齢ごとのドットを折れ線で結んだグラフを描いてみました。
非行に関する相談は,年齢別の偏りが大きく,13歳の件数だけで全体の3割が占められています。デンジャラス・エイジとでもいいましょうか,不登校,いじめ,および性格行動の件数のピークも,この年齢に位置しています。
曲線の目立った山が他にないか探してみると,育児・躾関連の山が2歳にあります。この年齢の件数だけで,全体のほぼ2割が占められています。
俯瞰していうと,子育てが大変な時期というのは,「2~5歳」の時期と,それから10年を経た「12~15歳」の時期といえましょうか。前者の時期では「育児・躾」関連,後者の時期では「問題行動」関連の苦労がついてまわります。
この年齢のお子さんがいるご家庭は大変でしょうが,わが子だけが異常なのだと思わないでください。この時期の苦労は,多くの家庭が経験することです。危機はやがては過ぎ去り,再びやってきては,また過ぎ去る・・・。こうした長期的な展望を持つことが大切かと存じます。
狭い生活世界で生きている個々人に俯瞰的な視野を与えてくれること。マクロな統計の効用は,こういう部分にあるものと思っています。