2011年11月7日月曜日

博士号取得率②

 前々回の続きです。今回は,人文科学系,社会科学系,ならびに教育系の下位に位置する,学問専攻ごとの博士号取得率を出してみようと思います。

 ここでいう博士号取得率とは,①ある年度の博士課程入学者数と,②3年後の博士号所得者数を照合して算出するものです。具体的にいうと,②を①で除すことになります。単位は%です。①と②の数字は,文科省『学校基本調査(高等教育編)』から得ることができます。

 まずは,前々回と同様,1987年度入学者の学位取得率を出してみましょう。当該年度の文学専攻の博士課程入学者は390人です。3年後(1990年春)の文学専攻の博士課程修了者のうち,学位取得者数は26人です。よって,この専攻でいうと,1987年度入学者の学位取得率は26/390≒6.7%となります。およそ15人に1人。驚異的な低さです。

 なお,分子の学位取得者数には,1987年度よりも前の入学生も含まれますが,当該年度入学生からも,最短修業年限(3年)を超えた後に学位取得に至る者が同じくらい出るものと仮定します。

 では,人文系,社会系,および教育系を構成する9つの専攻について,1987年度入学者の学位取得率をみてみましょう。*この頃は,教員養成系の博士課程はまだありませんでしたので,当該専攻の欄はペンディングにしてあります。


 理系に近い性格を持つ体育学を除いて,学位取得率は軒並み10%台と低くなっています。この頃では,文系のどの専攻でも,博士号学位の授与基準がきわめて厳しかったことがうかがわれます。もっとも,院生の多くが,博士論文を在学中に認めようと考えてはいなかったものと思われます。単位取得満期退学→就職というコースが一般的であったのではないでしょうか。

 しかし,現在では状況は大きく様変わりしています。1987年度入学生と2007年度入学生の学位取得率を比較しましょう。この20年間の変化はドラスティックです。後者の率は,2010年春の学位取得者数を,2007年度入学者数で除した値です。


 かつては10%を割っていた文学専攻の学位取得率も,2007年度入学者ではほぼ4割にまで増えています。入学者の5人に2人が学位取得に至る,ということです。

 私は教員養成系の博士課程を出て学位を取りましたが,この専攻では,学位取得率が6割を超えます。むーん。高いですねえ。だから,私のような輩でも学位が取れたのかしらん。

 現在では,人文・社会科学系の博士課程に行っても,4~5割ほどの確率で博士号をゲットできます。オトクといえばオトクです。一昔前に博士課程で学んだ方々からすれば,憤りすら感じる状況になっているといえましょうか。

 ですが,学位を取りやすくなったといっても,その後の行き場がなくなっていることは周知のとおりです。食えなくなってもいい,世捨て人同然になってもいい。生涯,自分のテーマを追い求めていきたい。そういう気概のある方は,どうぞ,博士課程の門戸を叩いてください。

 私自身,もう一度20代前半の頃に返れるとしても,やはり博士課程に進学する道を選ぶつもりです。研究が好きですから。