大型連休の最中ですが,みなさま,いかがお過ごしでしょうか。明日から2日間は,暦の上では平日となっています。私が学生の頃は,連休の谷間に授業をする大学教員は滅多にいませんでしたが,今はどうなのでしょう。
私は,2日の水曜は授業をすることになっています(6限!)。半期15回の授業をきっちりやるようにとのお達しが出ているからです。私はヒマだからいいのですが,学生さんからはブーイングが出るだろうなと思っていました。ところがさにあらず。
「来週は連休の谷間ですが,授業はやりますよ」と言ったところ,嫌そうな顔をする者は一人もおらず,皆,「それが当然」という顔をしています。私の頃だったら,教員が吊るし上げを食らっているところです。私と彼らの年齢差は10歳ちょっとですが,今の学生さんは違うなと,戸惑いにも似た感想を抱いています。「学士力」の育成を掲げる,当局の締めつけの故でしょうか。
私は,今の大学生の生活実態を知りたくなりました。具体的にいうと,彼らが1日をどのように過ごしているかです。総務省の『社会生活基本調査』では,1日のそれぞれの時間帯における調査対象者の行動分布が細かく調べられています。下記サイトの表10では,在学者の結果がまとめられています。最新の2006年調査の結果です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001008022&cycode=0
私はこの表のデータを使って,平日の各時間帯における大学生・大学院生の生活行動がどのようなものかを明らかにしました。大学生と大学院生は分かちたいところですが,原資料にて両者が一括されているので,この点は致し方ありません。
下図は,15分刻みの時間帯ごとに,調査対象となった学生(1,951人)の行動分布を図示したものです。各時間帯において,**をしていた者が何%,というように読んでください。たとえば深夜の3時では,ほとんど(約9割)の者が眠っています。
学生ですから,起床の時間は一様ではないようです。朝6時で90%,7時で64%,8時で38%,9時になっても23%の者が布団の中にいます。
日中は,学生の本分である学業に励む者が最多です。ここでいう学業には,授業のほか,授業に関連した予習・復習・課題遂行などが含まれますが,日中の学業のほとんどは授業でしょう。夕方になると,スポーツ(部活,サークル)をする者,帰途につく者が多くなります。そして夜の早い時間はバイト。夜の7時から9時では,対象者の15%割ほどがバイトしています。
その後は,テレビ,休養,趣味など。一方,やはり学生ですので,この時間帯でも,授業関連の課題をしたり,授業とは無関係の学習・研究に打ち込んだりする者もいます。夜の10時でいうと,この手の勉学クンの者の比率はおよそ1割。
しかし,就寝は遅いようです。深夜の0時になっても,床に就いた者は4分の1ほどです。この時間になっても,テレビを観たり趣味を楽しんだりしている輩が2割ほどいます。ここでいう趣味・娯楽には,ネットゲームのようなものも含まれていることでしょう。就寝率が8割を超えるのは,深夜の2時になってからです。
いかがでしょう。まあ,学生の生活なんてこんなもんだろう,と思われただけかもしれません。やはり,あるデータの特徴を検出するには,比較という作業が欠かせません。
総務省『社会生活基本調査』は5年おきに実施されているのですが,2006年調査の2回前の1996年調査の数字と比べてみましょう。1日あたりの学業の平均時間が何分,睡眠の平均時間が何分というような,統計量の比較を試みます。1996年(平成8年)といったら,私が学部2年生だった頃です。どういう変化がみられることやら。
下表は,20の生活行動の1日あたりの平均時間を,両年次で比べたものです。この表の数字は,土日も含めた週全体のものであることに注意してください。1996年のデータは,週全体のものしか公表されていませんので,2006年のデータもそれに揃えています。
この10年間で,学業の平均時間が増しています。177分から210分へと,33分の増です。その分,睡眠,テレビ,および交際といった行動の時間が減じています。うーん,当局の締めつけもあってか,今の学生さんは以前と比べて勉強するようになっています。冒頭で書いた私の印象は,数字でも裏づけられるのだなあ。
ほか,この期間中に増加が顕著なのは,休養(+11分)や趣味(+12分)です。・・・交際やスポーツの時間が減っていることを考え合わせると,大学生の「内向化」が進んでいるようにも思えます。口が悪い人は,学業時間の増加も加味して,大学生の「ガリ勉化・内向化」が進んでいると形容することでしょう。
昨年,2011年の『社会生活基本調査』が実施されたところです。2006年から5年を経た2011年では,どういう大学生のすがたが観察されるでしょうか。この期間中,リーマン・ショックをはじめとした,いろいろなことがありました。自己防衛の気風が高まり,上表にみられるような変化がますます進行しているのでしょうか。それだけというのは,ちょっと寂しい思いがします。
しばらく先になるでしょうが,2011年調査の結果が公表されるのを心待ちにしています。