昨日,各地の官公庁や企業で,新入職員の辞令交付式が行われた模様です。新規採用教員に辞令が交付されたのも,昨日だったのではないでしょうか。この4月から晴れて教壇に立つこととなった皆さま,おめでとうございます。
さて,辞令交付式の会場に,激戦を勝ち抜いた同士が集ったことと思いますが,その顔ぶれはいかがでしたか。若い人が多かったでしょうが,中には,年輩の方もおられたのではないでしょか。
教員採用試験の受験年齢の上限は30歳だとか35歳だとかいう噂が飛び交っていますが,そのようなことはありません。資料は後でお見せしますが,現在,ほとんどの県において,年齢の上限は高めに設定されています。年齢制限を設けていない県も少なくありません。
最近は,多様な人材を得たいということから,民間経験者が歓迎される向きもあります。もしかすると,白髪の交じった中年以上の方が会場を埋め尽くした自治体もあったかもしれません。
今回は,公立学校の新規採用教諭の年齢構成を明らかにしてみようと思います。「自分はもう30半ばだけど,可能性はあるかな」といった疑問を持っておられる方の参考になればと存じます。
文科省の『学校教員統計調査』から,新規採用教員の年齢構成を職種別に知ることができます。ここで明らかにするのは,新規採用された「教諭」の年齢構成です。公立学校の新規採用教諭は,教員採用試験の合格者とほぼ同じであると考えてよいでしょう。
2010年の上記調査から,前年度間(2009年度間)の新規採用教諭の年齢構成を把握しました。公立小学校,中学校,そして高等学校の数字をみてみましょう。時代変化も押さえるため,1997年度のデータとの比較もします。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001016172
小学校では,新規採用教諭の数がグンと増えていますねえ。5,520人から12,527人と,2.3倍にもなっています。団塊世代教員の大量退職といった人口的要因が効いています。中高は微増です。
その新規採用教諭の年齢はというと,小・中学校では20代前半,高校では20代後半が最も多くなっています。近年の変化に注目すると,どの学校でも,20代前半の比重が大きく減じています。高校でいうと,1997年度ではほぼ半数を占めていましたが,2009年度ではほぼ2割にまで減っているのです。
代わって,それ以上の年齢層の比重が増しています。各学校の両年次の分布を,簡易な代表値で要約してみましょう。30歳以上の者の比率と,平均年齢をとってみました。平均年齢は,原資料に掲載されているものです。
小学校では約2割,中学校では約3割,高等学校では約4割が30歳以上です。全体を均した平均値の伸びも観察されます。公立学校の新規採用教諭の高齢化が進んでいることが明白です。
新卒時の就職失敗を苦にした自殺者が出るほど,わが国では新卒至上主義が根強いのですが,教員の世界は,さにあらず。「再チャレンジ」可能な世界であり,その程度は年々強まっています。辞令交付式の会場に多様な人材が集うことは,当局の側も望んでいるところなのではないでしょうか。
思ったより新卒該当年齢(20代前半)が少ないことを知りました。当初の予想では,6~7割くらいだろうと踏んでいたのですが。でも,ちょっぴりうれしい誤算でもあります。
今みたのは,全国レベルの新規採用教諭の年齢構成ですが,当然,個々の自治体によって傾向は異なるでしょう。次回は,47都道府県別の統計をご覧に入れようと思います。高齢層の比重が比較的大きい県はどこでしょう。
その前の予備知識といっては何ですが,教員採用試験の年齢制限を,それぞれの県がどのように定めているかをみておきましょう。2012年度試験の資料に依拠して,各県を塗り分けてみました。指定都市は除きます。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/senkou/1314466.htm
30代後半という県が最も多いようですが,40代,さらには制限そのものを設けていない県も見受けられます。上限が最も低いのは秋田で,この県のみ,30代の前半です。当県は,博士号取得教員の積極採用に乗り出している県ですが,一般試験の年齢制限は比較的低くなっています。
では,次回に続きます。