2012年9月11日火曜日

都道府県別の就学援助受給率

 9月7日の記事で申しましたが,『都道府県別・市町村別の教育・社会・経済指標データセット』という電子資料を,文科省より提供いただきました。県別,市町村別に,さまざまな教育指標のほか,教育と関連する各種の社会経済指標も計算することができるスグレモノです。

 最近10年ほどの時系列推移も出ているので,関心のある指標の推移を,地域別にたどることも可能です。

 さあ,このお宝をどう活用したものでしょう。手始めに,47都道府県の就学援助受給率が最近どう変化してたかを明らかにしてみました。

 就学援助とは,義務教育学校の就学年齢(学齢)の子がいる保護者のうち,生活保護法が定める要保護者,ならびにそれに準じる程度に生活が困窮していると認められる準要保護者に対し,学用品費などが援助される制度です。

 就学援助受給率とは,就学援助の対象者の子弟(要保護児童生徒,準要保護児童生徒)が,公立の小・中学校の児童生徒のうちどれほどを占めるか,という指標です。県別のトレンドをみる前に,まずは全国の傾向を追ってみましょう(下表)。指標の計算過程についてイメージを持っていただくため,分子,分母のローデータも漏れなく提示いたします。


 分子の就学援助受給者数は,最近10年間において,106万人から155万人へと増えました。公立小・中学生あたりの比率(受給率)にすると,9.7%から15.3%に上昇しています。今日では,小・中学生の約7人に1人が就学援助を受けていることになります。

 上表は全国の傾向ですが,変化の様相は,都道府県によって異なります。私は,上記のデータセットの統計をもとに,最近10年間の就学援助受給率の変化を,都道府県ごとにたどってみました。グラフにすると,47本の曲線が描かれることになりますが,それは煩雑ですので,ベタな一覧表の形で結果を提示します。資料としてご覧いただければと存じます。


 細かいコメントはしませんが,全県中の最大値は大阪,最小値は静岡,というように固定されています。各県の値の高低は,義務教育学校に通うこともままならない貧困児童生徒の量を示していますが,就学援助の認定基準が自治体によってかなり異なる可能性があることもお含みおきください。この点については,9月6日の記事をご覧いただければと思います。

 ちなみに,この10年間の増加倍率が最も大きいのは,福島で2.29倍です(4.6%→10.6%)

 上記の表を作成するのはかなり大変そうにみえるかもしれませんが,何のことはありません。文科省の上記データセットにおいては,各種のローデータがエクセルファイルに入っています。よって,県別の就学援助受給率に必要な分子(要保護,準要保護児童生徒数)と分母(公立小・中学生数)をコピペし,割り算をするだけで,直ちに目的を達成できました。所要時間10分。これは便利!

 これで終わりというのは芸がないので,2010年の県別数値を地図化しておきましょう。10%未満,10%以上15%未満,15%以上20%未満,20%以上,という4つの階級を設けて,各県を塗り分けてみました。黒色は,20%(5人に1人)を超える県です。北海道,東京,大阪,広島,山口,高知,および福岡が該当します。


 これからも随時,上記データセットから地域別の諸指標の変化を計算し,資料としてご覧に入れようと存じます。ただし,私は気まぐれですので,約束が履行されるかどうかは分かりません。データセットをご希望の方は,文科省生涯学習政策局調査企画課に申請なさってください。簡単な手続きにて,無償でブツを送ってくれます。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/1322611.htm