2013年10月16日水曜日

ホワイト就業率

 10月6日の記事では,薄給で死ぬほど働かされている「スーパー・ブラック」就業者の比率を出したのですが,今回は,その逆の側面の量を測ってみようと思います。法定の就業時間で,フツーの収入を得ている者の比率です。ブラックの対語をとって,ホワイト就業率ということにします。

 就業時間と収入という点から,ホワイトな働き方をしている者を割り出したいのですが,その基準をどうしたものでしょう。まず就業時間については,年間300日未満・週43時間未満とします。これだと最大でも,月25日,週6日,1日あたり7~8時間の就業ということになります。ちなみに,労基法が定める1日あたりの労働時間の上限は8時間です。

 もっといい基準があるだろうといわれるかもしれませんが,『就業構造基本調査』の就業時間のカテゴリーを勘案して,ひとまずこの基準を据えようと思います。

 次に収入ですが,こちらは年収500万円以上としましょう。フツーの収入がどれほどかは年齢(ライフステージ)によって違いますが,15歳以上の全有業者を均せば,だいたいこの辺りじゃないでしょうか。

 2012年の『就業構造基本調査』の結果によると,15歳以上の有業者のうち,上記の基準を満たしている「ホワイト」就業者は432万人ほどです。全有業者(6,442万人)の6.7%に相当します。およそ15人に1人です。

 年収500万以上の者は結構いますが,法定の「ホワイト」な働き方でそれを得ている者は多くないですね。

 では,先の記事と同様,この値を職業別に出してみましょう。私は,68の職業について,上記の意味でのホワイト就業者の率を計算しました。以下に掲げるのは,そのランキング表です。


 トップは管理的公務員で,全体の半分近くがホワイトです。まあ,年齢が高いというのもあるでしょう。その次は電車の運転手さんで,だいたい3人に1人。これも何となく分かるな。

 なお,医者や法務従事者(弁護士等)のようなブラック専門職と呼ばれがちな職業が,ここでは上位に位置しています。年収を加味すると,やはりこうなるのでしょう。教員も10位にランクイン。

 しかるに,これは相対順位です。職業を問わず,法定の「ホワイト」な働き方で年収500万円を得ている者は多くないことに注意しましょう。

 10月6日の記事も合わせると,68の職業について,スーパー・ブラック率とホワイト率の両方が明らかになったことになります。私は,この2指標からなる2次元のマトリクス上に,それぞれの職業を位置づけた図をつくりました。「明」と「暗」の両面から,各職業の位置を知ることができます。

 横軸のスーパー・ブラック就業率とは,「年間300日以上・週75時間以上就業&年収300万円未満」の者の比率です。リンク先の記事とは異なり,ここでの単位は%であることに留意ください。


 左上にあるのは,ブラックが少なくホワイトが多い職業であり,右下に位置するのはその逆です。大よそ,一方が少なければ他方が多いという傾向ですが,法人・団体職員や民間の管理職のように,ブラック・ホワイトともに多い職業もみられます。

 前の記事でも申しましたが,行政の側は,定期的にこの手のデータを作成し,公表するようにしたらどうでしょう。公表されている統計表では,職業別のブラック・ホワイト率しか出せないようですが,その気になれば地域別(県別)のデータも出せるはずです。

 各県や業界が,ホワイトな働き方の多寡を競い合うのはまことに結構なことです。競争は人々の暮らしや生活を破壊するといいますが,こういう競争は,それとは逆の結果をもたらしてくれることでしょう。それを人為的に促す手立てを講じるのも,行政の重要な役割あると思います。