前に,首都圏(1都3県)の市区町村のデータでやったことのあるテーマですが,射程を全国に広げて,同じ分析をしてみましょう。
わが国では人口が減っていますが,どの自治体も,何とか新住民を取り込もうと一生懸命です。狙いは,とりわけ子育て期の年代です。子どものいるファミリーが入ってきてくれれば,地域も活性化するというもの。そういう事情からか,「子育てに選ばれる地域はどこか?」という特集を,育児雑誌の類でよく見かけます。
私はこの主題に,統計的にアプローチしてみようと思います。各市町村について,子育て年代(25~39歳)の転入超過率という指標を出してみます。2015年中の転入超過数(=転入数-転出数)を,同年1月1日時点の人口で除した値です。意味するところは,人口の転出入(mobility)によって,初期人口が何%増えたか,です。『住民基本台帳人口移動報告』(2015年)に載っている,日本人住民のデータを使います。
http://www.stat.go.jp/data/idou/3.htm
上記資料によると,私が済んでいる東京都多摩市の場合,2015年中の25~39歳の転入超過数は-47人(A)です。入ってくる人より出ていく人が多い,「転入<転出」ですので,マイナスの値になります。子育てにはいい環境だと思うのですがねえ・・・。
2015年1月1日時点における,25~39歳人口は26,952人(B)。したがって,2015年の多摩市の子育て年代の転入超過率は,A/B=-0.17% と算出されます。値はマイナス。残念ながら,総勘定でみて,子育て年代が出て行っていることになります。
一方,都心の中央区は+5.18%です。転入超過により,子育て人口(25~39歳)が年間で5.18%増えている計算です。通勤時間も短くて済むし,タワマンがそびえたっていますからねえ。
これは,東京都の多摩市と中央区のケースですが,私は同じ値を,全国の1918市区町村について計算しました。分布の範囲はとても広く,最高の+21.59%から,最低の-13.39%までの幅があります。
ヒストグラムにて,分布の素性を見ていただきましょう。ピンク色はプラス,緑色はマイナスの市区町村です。
2015年中に,子育て年代が増えた市区町村(転入超過率がプラス)が665で,全体の3分の1ほどです。残りの3分の2の地域では,逆に減少しています。数でみて,子育て年代人口を減らしている市区町村がマジョリティです。
そうした中,子育て年代をたくさん取り込んでいる地域(グラフの上のほう)に関心がもたれます。その顔ぶれをご覧に入れましょう。下表は,25~39歳の転入超過率が上位50位の市区町村です。
上位には過疎地域が並んでいますが,これは初期人口(ベース)が少ないことに注意しないといけません。
赤字はベースの初期人口が千人以上で,黄色マーク付きは1万人以上の市区町村なり。先ほど上げた,東京の中央区があります。駅前保育が自慢の,千葉県流山市もランクイン。茨城のつくばみらい市も見受けられますが,つくばエクスプレスの効能でしょうか。
統計から明らかになった,子育て年代人口(25~39歳)の転入超過率の上位一覧です。「子育てに選ばれる地域はどこか」に関する,雑談のネタにでもお使いいただければと存じます。