2012年2月16日木曜日

子どもの幸福度指数(学校)

今回は,学校という場における,子どもの幸福度を県別に計測してみようと思います。現代の子どもたちの生活において,学校は非常に大きなウェイトを占めています。学校生活がどのようなものかは,子どもにとって大変重要な意味を持っています。

 学校生活をどういう観点から診るかですが,「学校は勉強をする場,友達との交流をする場」という,誰もが知っているごく当たり前の前提を置いてみます。

 この大前提がどれほど実現しているか(崩れているか)を測る指標として,私は,①学校で好きな授業がある者の比率,②学校で友達と会うのが楽しい者の比率,③不登校者出現率,というものを思いつきました。

 ①は勉学面の指標です。文科省『全国学力・学習状況調査』では,公立の小学校6年生と中学校3年生に対し,学校生活について尋ねています。この中の「学校で好きな授業はあるか」という問いに対し,最も強い肯定の回答(「あてはまる」)を寄せた者の比率を拾ってみます。2009年調査のデータです。

 ②は交友面の指標です。上記文科省調査の「学校で友達と会うのは楽しいか」という設問に対し,最も強い肯定の回答(「あてはまる」)を寄せた者の比率です。同じく2009年調査のデータです。

 最後の③は,不適応の側面を測る指標です。小・中学生のうち,「学校嫌い」を理由に年間30日以上欠席した者の比率です。いわゆる不登校者の出現率です。分子は2009年度間,分母は同年5月1日時点の数字です。文科省『学校基本調査』から数字をハントし,計算しました。

 ①と②が高いことは,先ほど述べた大前提に,子どもが馴染んでいることを意味します。③が高いことは,その逆であることを示唆します。このような枠組みにおいて,学校面での子どもの幸福度を計測してみようと思います。

 私は,これら3つの指標を都道府県別に計算しました。前回と同様,全国値と47都道府県の両端の値を示します。


 前回の家庭面の指標ほど大きな地域差はありませんが,各県の相対的な差を検出する分には十分な差といえます。不登校率は,都市部の神奈川が最高なのですね。

 では,この3指標を総合して,学校面での子どもの幸福度指数を構成しましょう。やり方は前回と同じです。47都道府県中のランクに基づいて,各県の指標の値を1~10点のスコアに換算します。

 勉強と交友はプラス面の指標なので,1~5位=10点,6~10位=9点,11~15位=8点,16~20位=7点,21~25位=6点,26~30位=5点,31~35位=4点,36~40位=3点,41~45位=2点,46~47位=1点,と換算します。

 不適応はマイナス面の指標なので,1~5位=1点,6~10位=2点,11~15位=3点,16~20位=4点,21~25位=5点,26~30位=6点,31~35位=7点,36~40位=8点,41~45位=9点,46~47位=10点,と換算します。

 3指標のスコアの平均点をもって,学校面での子どもの幸福度指数とみなします。値が高いほど,幸福度が高いことを意味します。下表は,その一覧です。


 幸福度指数の最高は宮崎の9.67,最低は高知の1.67です。前回みた,家庭面での幸福度指数よりも大きな開きが見受けられます。宮崎は,幸福度指数の満点(10点)にほぼ近い水準です。あくまで相対評価ですが,当県では,学校において幸福感を感じている子どもが多いことと思われます。

 指数が7.00を超える県は赤色にしています。このうち,家庭面の指数も赤色であったのは,栃木,富山,山梨,山口,愛媛,そして鹿児島です。これらの県では,家庭と学校の双方の場において,子どもの幸福度が高いことがうかがわれます。

 最後に,学校面での幸福度指数を地図化しておきましょう。前回と同じく,4点未満を黒色,4点台を赤色,5点台を黄色,6点台を水色,7点以上を白色で塗ったマップをつくりました。


 指数が低い黒色と赤色の地域は,近畿,山陰,四国に多いようです。京都と大阪は,家庭面での幸福度マップでも黒色でした。やや気になる傾向です。

 次回は,地域社会における子どもの幸福度を測ってみます。その次の回では,3つの場における幸福度指数を使った,総合的な評価をしてみる予定です。