記事のタイトルが長くなりがちで,すみません。
前回は,精神疾患による教員の休職率を,学校種別・都道府県別に明らかにしました。小・中学校の休職率の県別数値をみると,1位は沖縄,47位は山梨でした。
この結果をみて,教員の精神疾患率は,前々回明らかにした「子どもの幸福度指数」と相関しているのではないか,と思いました。子どもの幸福度指数とは,字のごとく,各県の子ども(小・中学生)がどれほど幸福かを測る尺度です。家庭,学校,および地域社会という,3つの生活の場の幸福度尺度を総合して作成したものであります。詳細は,2月15日から18日までの記事をご覧ください。
教える対象である子どもに,どれだけ笑顔があふれているかは,教員のメンタル・ヘルスに少なからず影響することと思われます。事実,教員の精神疾患が最も少ない山梨は,子どもの幸福度指数が最高の県です。その逆の沖縄は,子どもの幸福度指数が下から4番目という位置にあります。
47都道府県のデータを使って,子どもの幸福度指数と,精神疾患による教員の休職率の相関関係を調べてみました。下図は,子どもの幸福度指数と小学校教員の休職率の相関図です。
回帰直線を引くと右下がりになる,負の相関関係です。大まかには,子どもの幸福度が高い県ほど,小学校教員の休職率が低い傾向にあります。相関係数は-0.507であり,1%水準で有意な相関と判定されます。中学校教員の休職率との相関係数は-0.411です。こちらも,統計的に有意な相関と判断されます。教員の状況は,日々を共に過ごす子どもの状況と無関係ではないようです。
もう少し分析を深めてみましょう。教員の休職率は,どの面での子どもの幸福度と強く相関しているのでしょうか。小・中学校教員の休職率と,3つの面での子どもの幸福度の相関係数を出してみました。
小学校教員の休職率は家庭面,中学校教員の休職率は地域面での子どもの幸福度と強く関連しています。教員が精神疾患を患う原因の一つに,子どもの問題行動が挙げられるでしょう。①子どもの生活の歪み→②問題行動→③教員の精神疾患,というごく単純な経路を想定すると,①の局面に際して,年少の児童は家庭,生活範囲が広がる生徒の場合は地域の影響が大きいのではないか,と思われます。
しかし,小・中学校の休職率とも,学校面での子どもの幸福度と無相関であるのは意外です。教員の精神疾患の環境要因は,広く考えると,学校という職域とは別の領域にも分布していることがうかがわれます。