家庭,学校,および地域社会という3つの場における,子どもの幸福度を測ってきました。今回は,それらを使った,総合的な評価をすることにいたしましょう。*ここでいう子どもとは,義務教育学校(小・中学校)の就学年齢の子どものことをいいます。
やり方はいたって簡単です。3つの場の幸福度指数の平均値(average)を求めてみます。この値をもって,子どもの幸福度指数の総合バージョンといたしましょう。以下に,47都道府県の一覧を掲げます。
右端に,3つの場の指数を平均した,総合的な幸福度指数が示されています。1位は,山梨の8.11です。最下位は,大阪の2.44です。7.00を超える数字は赤色にしています。秋田,山形,富山,山梨,愛媛,宮崎,そして鹿児島が該当します。これらの県は,子どもの幸福度が相対的に高い県であると評されます。
数字の羅列を掲げるだけというのは芸がないので,指数が高い(低い)県の地理的な位置も確認しておきましょう。下図は,総合的な子どもの幸福度指数に基づいて,各県を塗り分けたものです。4.0未満は黒色,4点台は赤色,5点台は黄色,6点台は水色,7点以上は白色にしています。
幸福度の高い白色の地域は固まっているというわけではなく,あちこちに点在しています。一方,幸福度が低い黒色や赤色の地域は,ある程度固まっているようです。首都圏,近畿,および四国です。人口が多いこれらの地域において,子どもの幸福度指数が低いというのは,やや気がかりです。
ここで出した,子どもの幸福度指数の総合版は,法政大学の坂本教授らが発表した県別の幸福度指数(下記サイト参照)と相関しています。相関係数は0.495で,統計的に有意な相関と判断されます。子どもというのはやはり,社会の鏡であるのだな,と思います。
http://www.hosei.ac.jp/koho/photo/2011/111110.html
また,各県の非行少年の出現率とも関連があります。私は,2009年の小・中学生の非行少年出現率を県別に計算しました。各県の警察に検挙・補導された小・中学生の数を,小・中学生全体の数で除した値です。分子の非行少年数は,警察庁『平成21年の犯罪』から得ました。この逸脱指標と,子どもの幸福度指数を関連づけてみると,下図のようです。
撹乱はありますが,今回出した子どもの幸福度指数が高い(低い)県ほど,少年非行が少ない(多い)傾向にあります。相関係数は-0.577です。1%水準で有意な相関と判断されます。
私個人の恣意的な枠組みで構成した,子どもの幸福度指数ですが,妥当性(信憑性)がゼロというわけではなさそうなので,ホッとしています。家庭,学校,そして地域社会という,子どもの主要な生活の場に注目したのは,間違いではなかったようです。
これから,枠組みをさらに精緻化していきたいと思います。ご意見等がありましたら,お寄せいただけますと幸いに存じます。