2015年12月29日火曜日

年末のプチ・トラブル

 先週の土曜日(26日)のお昼前に,メールが一件きました。某ライターさんからで,ある雑誌記事の執筆に,私が作成したデータを使わせていただきたい,という許諾申請です。希望があったのは,三世代同居率の国際比較のデータ(↓)。

 まあ,よくあることです。しかし,こう書いてありました。

  「**という雑誌でも三世代同居についての提言を行うことになり,その記事の中でも,欧州の先進国では三世代同居は数%だということで,各国の数字も使用させて頂く予定です。舞田先生が作られた各国の数値一覧は,スペースの都合で使用できず,お名前などは入れられず申し訳ないのですが,先生のツイッターからヒントを得ていることを事前にご連絡しておきたいと思いました」。

 私がカチンときたのは,赤字の文言です。私の意向も聞かずに,「使用させていただく予定です」と決めつけています。また,私が『世界価値観調査』(以下,WVS)のローデータから労力をかけて計算した著作物であるにもかかわらず,クレジットは記入しない,と言ってきています。こんな書き方をして,相手が怒るとは思わないのでしょうか。

 出典のWVSサイトにも当たった,とありましたので,自分が調べた数値として使いたい,ということなのでしょう。しかし,出典はWVSサイトではありません。そこには,計算済みの数値は掲載されていないはずです。なぜなら,私がローデータ(個票データ)を申請して,独自に計算したものだからです。それを,クレジット(作成者)の明記もしないで,あたかも自分が調べたかのように使うというのは,剽窃以外の何物でもありません。

 表の下に「資料:『世界価値観調査』(2010-14) 作成者:舞田敏彦」と添えられているのを見て,WVSサイトに公表されている数値を舞田が拾って表にまとめたのだな,と勘違いしたのでしょうね。それでWVSに当たって確認した,自分が調べたものだ,だからクレジットは明記しないと。

 そこで私は,WVSサイトに当たって計算済みのデータを確認したというなら,その画面のURLを教えてほしい,ないしは画面のスクリーンショットを送ってほしい,と要求しました。答えは,確認していないとのこと。つまりこの人は,出典の所在も突き止めず,舞田作成のオリジナルデータと知りながら,クレジットをつけないで記事に使うつもりだったことになります。あたかも自分で調べたかのように。

 「では,クレジットを明記するので,データを使わせてもらっていいか」と尋ねてきましたが,私は,こういうことをする人にデータを使ってほしくないと思い,使用不許可の返事をしました。その後,返信がありましたが,読まずに削除しました。これでおしまい。

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 どうやら,「資料:『世界価値観調査』(2010-14) 作成者:舞田敏彦」では不十分で,「資料:『世界価値観調査』(2010-14) 元データ計算・表作成者:舞田敏彦」,あるいは「*『世界価値観調査』(2010-14)のローデータより舞田敏彦が計算」と書かないといけないようです。また一つ,お勉強をさせてもらいました。

 しかしまあ,「クレジット明記の使用を許可いただけますか」と聞いてくればいいものを,「お名前などは入れられず」などと書いたのが,そもそもの誤りです。よほど,自分が調べたデータということで書きたかったのでしょうか。「舞田敏彦氏が『世界価値観調査』から計算したデータによると」という,一文を添えるのも嫌だったのでしょうか・・・。

 実はこの人は,同じ媒体で連載を持っている同志です(面識はありませんが)。私とは真逆のアプローチをとる人で,毎回楽しく読ませてもらっていました。「いいこと書くなあ,血が通っているなあ」と敬服していたのですが,こんな人だと分かってガッカリです。

 デュルケムは,「犯罪は社会にとって有益である。それによって,人々の道徳意識が進化するなど,社会が発展する」という趣旨のことを述べていますが,人は,自分が遭遇したトラブルから学ぶもの。私が揉め事の経緯を細かく記録するのは,せっかく得た教訓を忘れないようにするためです。今回の件で,発信する表やグラフのクレジット表記に不備があることを知りました。それを教えてくれたという意味では,このライターさんに感謝はしています。