2011年1月22日土曜日

雇用労働化

 人の働き方には,いろいろあります。たとえば,『国勢調査』の就労形態のカテゴリーには,「自営業」,「家族従業」,「雇用者」,というものがあります。予想がつくことではありますが,今日,圧倒的に多いのは雇用者,つまり企業などに雇われて働く人です。昔に比べて,自営業や家族従業というのはかなり少なくなっています。

 2005年の『国勢調査』によると,15歳以上の就業者61,505,973人のうち,雇用者は48,333,630人です。比率にすると,78.6%になります。働く人の4分の3以上が雇用者というわけです。半世紀前の1955年では,この比率は45.4%でした。労働の雇用者化が進んでいることが知られます。


 雇用者率を年齢層別に出し,時代変化を俯瞰してみると,上図のようになります。時代を下るほど,若い年齢層ほど,雇用者の比率が高くなってきます。2005年では,最も若い15~19歳の就労者のうち,98%が雇用者です。また,30代前半の部分まで,90%以上のゾーンが伸びてきていることも注目されます。

 こうした労働の雇用化は,親が子どもに,労働のモデルを見せる機会を減少させている側面があります。雇用者の多くは,自宅から遠く離れているオフィスで仕事をするわけですから。子どもが家で目にするのは,夜間や休日に,疲れてゴロ寝する父親の姿だけ,というようなケースもざらでしょう。

 子どもは親の背を見て育つといいますが,かつて,自営業や家族従業が多かった時代は,子どもは,働く親の姿を観察したり,実際に労働に参加したりすることで,生き生きとした職業観を身につけていました。ですが,今日では,そのようなことは期待しづらくなっています。そこで,学校が肩代わりして,キャリア教育などに力を入れるようになっているわけです。

 再び図をみると,現在の小学生の親世代にあたる,30~40代の就労者の8割以上が雇用労働者です。今の子どもたちにとって,労働のモデルの喪失というのは,大きな痛手となっています。こうしたハンディを人為的に補う手立てが要請されるでしょう。