前にも書きましたが,私は,「三丁目の夕日」が大好きです。映画のDVDはもちろん,西岸良平さんの『夕焼けの詩』のコミックも全巻そろえています。月並みな感想ですが,昭和30年代前半の時代状況を,生き生きと簡素な絵で描いてあるのがよいのです。
当時の生活水準は,今よりも格段に低いものでした。家電はなし,学校にくる子どもの半分はランドセル,半分は肩掛けカバン。服は,一部の子をのぞいて,一週間同じというのがざら・・・例を挙げればきりがありません。でも,「これから生活はよくなる」という希望が世の中全体に充満していました。当時の自殺率の低さが,このことを物語っています。
ところが,現在はその逆です。家電やパソコン等が普及し,生活水準は大きく向上しましたが,今後の見通しは,社会の一部の層をのぞいて,暗いものとなっています。2010年6月の内閣府『国民生活世論調査』にて,今後の生活の見通しについて問うた結果をみると,対象者の26.7%,およそ4分の1が「悪くなる」と答えています。この比率の時代推移は下図のようです。
1990年代初頭のバブル期をボトムとして,以後,値が急上昇しています。ピークは2008年の36.9%でした。リーマンショックの年です。最近は値が減じていますが,今後,再び反転しないとも限りません。いや,その可能性は大きいというべきでしょう。では,年齢層別にみるとどうでしょうか。例の社会地図の出番です。
値が30%を超えるブラックゾーンに注目すると,今世紀以降,50~60代が黒く染まっています。老後の生活は悲惨なものになるという,将来悲観でしょうか。私などは,今は老後のことなど考えないようにしていますが,この年齢になったらどうなるやら。
比率が5%に満たない安全色(青色)は,1990年代初頭の若者に見出されます。バブル期にあった当時,さぞうかれていたのでしょう。しかし,そんな彼らも今,40代あたりにさしかかり,大変な思いをしているわけです。
これから,この地図を右に延ばしていくと,どういう模様になるのでしょうか。黒い膿が広がり,直視できないような事態になっているかもしれません。元旦の記事でもいいましたが,人間にとって重要なのは希望です。経済成長率と同時に,希望所有率というような指標も開発し,政策立案に供していただきたいものです。