2011年2月9日水曜日

大卒無業率②

 前回の続きです。最近,学生の就職が厳しくなっているといわれます。私自身,卒論ゼミ生の状況を目の当たりにして,このことを肌身に感じています。ところで,大学生といってもいろいろな属性があります。前回みた地域もその一つです。今回は,学生の性別,専攻分野によって無業率がどう違うかをみてみましょう。無業率の定義は,前回の記事を参照してください。統計の出所は,文科省『学校基本調査(高等教育機関編)』です。


 まず性別にみると,この20年間の伸びは,男子学生で顕著です。2010年では,性差がほとんどなくなっています。専攻分野ごとにみると,芸術専攻学生の無業率が目を引きます。2010年の無業率は47%,ほぼ半数です。次いで高いのが人文科学系。創作活動を志向する文学青年や芸術青年は就職を忌避するといいますが,このことをうかがわせるデータです。

 もっとも,芸術専攻学生は,卒業生全体のわずか3%しか占めないマイノリティです。卒業生のほぼ半数を占める,人文科学系と社会科学系の無業率の高さが,全体の無業率を高らしめる主因であることは間違いないでしょう。そこで,これら2専攻について,さらに細かくみてみようと思います。


 上段は人文科学系の学問分類,下段は社会科学系の学問分類ごとに,無業率を出したものです。文学,哲学,史学といった人文御三家では,無業率が3割を超えます。最近の伸び幅は,文学専攻の学生で最も大きくなっています。

 しかるに,無業率を最も伸ばしているのは,社会科学系の商学経済学専攻学生です。1990年では8.9%であったのが,2010年では25.1%にもなっています。就職に有利そうな実学を学んだ学生が案外苦戦しているようです。その一方で,社会学の学生が結構健闘しています。最近の伸び幅が最も小さく,2010年では,法学や経済学専攻学生よりも,無業率が小さくなっています。社会学を勉強する私としては,ほくそ笑みたくなるような数字です。

 肝心なのは,やはり,何ができるか,ということでしょう。学生さんも,在学期間中,「自分をしっかり磨く」という気概を持って,大いに奮闘していただきたいと思います。