1月29日の記事において,朝食欠食率の統計を紹介しました。朝食を抜くことは体によくないことはもちろんですが,子どもの学力にも影響するといわれています。
文科省が毎年実施している『全国学力・学習状況調査』では,教科のテストのほか,就寝時間や朝食摂取頻度など,子どもの生活面についても調査しています。国立教育政策研究所のホームページ(URLはhttp://www.nier.go.jp/10chousakekkahoukoku/index.htm)において,朝食摂取頻度と学力の相関関係のデータが公表されていますので,それを加工して,下図をつくってみました。2010年度調査の結果です。
小学校6年生の受験生270,139人を,朝食の摂取頻度に依拠して4群に分け,各群の教科の成績分布をとったものです。成績は,上位4分の1がA層,…下位4分の1がD層というように区分されています。算数Bは,算数の応用的な事項を問うものであり,成績分散が最も大きいものです。
図をみると,両変数の相関が一目瞭然です。「食べている群」では32%がA層であるのに対し,「食べていない群」では48%,ほぼ半数がD層となっています。これは両端ですが,中間の群をみても,撹乱のまったくない,きれいな相関関係を呈しています。
朝食を食べている子どもほど,頭に血が回り,授業内容をよく理解できるなど,いろいろな解釈を添えることができるでしょう。しかし,成績と関連しているのは,本当に,朝食を食べているかどうかなのでしょうか。
実をいうと,サンプル270,139人のうち,ほぼ9割(89.0%)は,「食べている群」なのです。「どちらかといえば食べている群」は7.4%,「あまり食べていない群」は3.0%,「食べていない群」に至るとほんの0.6%しかいません。朝食を食べていない子というのは,相当のマイノリティです。家庭に何らかの問題を抱えた子や,貧困家庭の子が多いのではないかと推測されます。
こうみると,成績と関連しているのは,朝食をどれほど食べているかではなく,子どもの家庭環境であるといえないでしょうか。勉強部屋がない,塾通いが叶わない…などです。この疑念を払うには,保護者の所得水準や塾通いの頻度が同じくらいの子どもだけを取り出して,同じ図を描いてみる必要があります。それでもなお,上記と同じ模様になるのなら,朝食パワーはある程度信憑性を持つといってよいでしょう。
公的な数量調査に,「社会階層」という変数を取り入れることは大変嫌われます。ですが,この変数を入れないと解けない問題は多々あります。教育問題については,とくにそうです。一定数の抽出詳細集計の形でもよいですから,こうした真因に迫る分析がなされることを希望いたします。