「現在,~駅で発生した人身事故の影響により,電車の運転を見合わせています」というアナウンスを,よく駅で聞くようになりました。ここでいう人身事故とは,自殺である場合がほとんどです。これから数回かけて,鉄道自殺に関する統計をお見せしたいと存じます。
私は,国土交通省に情報公開申請をして,2009年度(2009年4月~2010年3月)に発生した鉄道自殺682件の一覧表を入手しました。当該の資料には,事件が起きた日時,場所,路線名などが細かく記録されています。これらのデータをエクセルに入力して,独自のデータベースを作りました。このデータベースをさまざまな角度から分析してみようと思います。
まずは,どの月で多く発生しているかです。下図は,682件の月別分布を百分率で示したものです。鉄道自殺には,駅構内でのものと,駅間でのものがありますが,2009年度では奇しくも,341件ずつで半々でした。この両者の組成が分かるようにしてあります。
最も多いのは10月の74件であり,全件数の10.9%を占めています。凍てつく2月あたりに多いのではないかと思いましたが,違いました。読書の秋,スポーツの秋,芸術の秋,食欲の秋…など,いろいろな標語がありますが,「鉄道自殺の秋」などという標語は普及してほしくないものです。
次に,時間です。0時台~1時台,2時台~3時台…というように,2時間区切りで分布をとってみました。深夜の時間帯に少ないのはよいとして,最も多発する危険な時間帯は,20~21時であるようです。この時間帯の発生件数が全体の12%を占めています。会社で嫌なことがあって,鬱状態になり,やってきた電車に…ということでしょうか。
このようなラフ・データでは,突出して危険な時間帯というのは検出できませんでした。しかし,平日と休日とに分けて,時間の分布を出すと,何か分かるかも知れません。そのような詳細な解析(多重クロス分析)は,別に機会に譲ろうと思います。