結果は,有意なマイナスの相関。共働きが多い県ほど,虐待相談の件数が少ない。逆をいえば,母親が一人家に籠って育児をしている県ほどヤバい,ということです。これがなぜかについては,取り立てて書くまでもないでしょう。
この記事を読んだという方から,保育所に入れている乳幼児の率と虐待との相関が見たい,という要望がありました。なるほど,興味あるデータですよね。まだ作ってなかったので,これを機に作成してみました。
私は,以下の3つの数値を都道府県別に収集しました。*は出所です。政令指定都市の分は,当該市が立地する県の中に含めています。
a 2014年10月時点の0~5歳人口 *総務省『人口推計年報』(2014年)
b 2014年10月時点の認可保育所在所者数 *厚労省『社会福祉施設等調査』(2014年)
c 2014年度間に児童相談所が対応した虐待相談件数(就学前の児童が被害者のもの) *厚労省同『福祉行政報告例』(2014年度)
この3つの数値を使うことで,各県の乳幼児の保育所在所率と虐待相談率(≒被害率)を出すことができます。後者はあくまで見立て値ですが。
下の表は,計算結果の一覧表です。算出された率の黄色マークは最高値,青色マークは最低値です。赤色は,上位5位の数値を指します。虐待相談率は,ベース1万人あたりの相談件数です。
乳幼児の保育所在所率は,最低の埼玉が24.5%,最高の島根が61.9%,違うものですね。右側の虐待相談率に至っては,すさまじいまでの地域差があります。これは,各県の福祉行政方針の影響もあるでしょうが。
さて,この2つの指標はどういう相関関係にあるのか。横軸に保育所在所率,縦軸に虐待相談率をとった座標上に47都道府県を配置すると,下図のようになります。
バラけていますが,傾向は右下がりです。保育所に入れている乳幼児が多い県ほど,虐待相談が少ない。相関係数は-0.3427であり,5%水準で有意です。
左上の都市県と,右下の日本海沿岸県のコントラストが,何とも鮮やか。個人レベルで解釈するならば,幼子を保育所に預け,社会進出が叶っているママほど,育児ストレスに苛まれにくい,ということでしょうか。
ちなみに女性の「イライラ」の火柱は,キャリアの中断期に最も高くなっています。
無精ですが,2014年4月11日に『日経DUAL』に書いた記事の文言を引用し,データの解釈に代えます。
以上です。