前回,大学院博士課程への入学者が減っているというお話をしました。大学教員になることはとても難しい,いや不可能である,という認識が広まったためと思われます。
ですが,大学の新規採用教員の数そのものは,増えています。文科省の『学校教員統計調査』によると,1988年度間では7,994人でしたが,2006年度間では11,528人となっています。1.4倍の伸びです。
はて,これはどういうことでしょうか。このことを考えるには,新規採用教員の組成を調べてみる必要がありそうです。私は,1988年度間と2006年度間について,新規採用教員の性別と年齢の構成を明らかにしました。下図をご覧ください。
両年の新規採用教員の組成を,人口ピラミッドのような形で示しています。年齢別にみると,最も多いのは30代前半であることに変わりはないですが,この層の比重は36%から30%へと減っています。比重の減少がさらに著しいのは20代後半で,30%から19%になっています。若年層の比重が減少していることが明白です。
代わって,中高年層のシェアが広がっています。30代後半以上の比率は,1988年度間では29%でしたが,2006年度間では49%です。今日,大学の新規採用教員のおよそ半分が30代後半以上,約3割が40歳以上です。
また,女性の比重の増加も特記されるべきでしょう。1988年度間の女性比は13%でしたが,2006年度間では27%と倍増しています。絶対水準ではまだまだ低いというべきでしょうが,最近の男女共同参画政策の効果として,評価されるべきことでしょう。
一言でいって,大学に教員として雇われる人間の構成は多様化しています。近年,実社会での経験が豊富な社会人を大学教員に迎え入れようという傾向が強まっていると聞きます。たとえば,2007年に創設された教職大学院では,教員の4割は実務家教員とすることと定められています。上記の統計は,こうした動きの表れとみることもできるでしょう。
こうみると,大学教員を志すならば,博士課程などにストレートに行かず,実社会で功績を挙げるほうがよい,という見方もできます。博士号をとるのは,後からでもよいわけですし…
30近くまで生業に就いたことのない,温室育ちの博士というのは,今後,あまり歓迎されなくなるかもしれません。