2011年5月18日水曜日

大学生の休学

 前期の授業が始まって1月ほどですが,この間に,2人の学生さんから人生?相談を受けました。2人とも,休学しようかどうか迷っているとのことです。

 理由を問うと,1人は,第1志望だった国立大学を再受験するためだそうです。もう1人は,大学が面白くないので,他にふさわしい道がないかどうか,休学してじっくり考えたいとのこと。

 休学とは,学生が一定期間授業を受けない期間に入ることで,それを許可するか否かは,教授会の議を経て,学長が決定することとされています(学校教育法施行規則第144条)。理由としては,病気や留学というものが多いのでしょうが,上記のような不適応や,さらにはアパシーという類も少なくないことでしょう。

 2010年の文科省『学校基本調査(高等教育機関編)』によると,同年5月1日時点での,大学生の休学者数は27,993人と報告されています。同時点の大学生全体(2,887,414,人)の9.7‰に相当します。%にすると約1%,100人に1人というところです。

 興味本位から,この休学率の時代推移を観察することにしました。この指標は,1967年(昭和42年)から跡づけることができます。


 グラフにすると,上図のようになりました。2010年の9.7‰という値は,過去最高です。休学率は,1990年代後半以降伸びています。日本社会に暗雲が立ち込めてきた時期と一致して,休学率が高まっていることは,あまり積極的でない理由による休学が増えていることをうかがわせます。最近2年間にかけて,値がグンと上昇していることも気になります。

 私は,最近の休学率上昇の内実を考えるため,2008年から2010年にかけて,大学生のどの層で休学者が増えているのかを調べました。性別,大学の設置主体,および学年という観点を設けています。


 まず,最下段の大学生全体の休学者数をみると,この2年間で1.22倍になっています。これを属性にみると,男子学生,私立大生,そして4年生の休学者の増加が目立っています。4年生に多いのは,最近の就職難を反映しているものと思われます。就職留年中の学費節約という目論見でしょうか。

 休学率という指標からも,最近の大学生の状況が良好なものではない,ということが推測されます。大学院や短期大学といった,他の高等教育機関についても同じ指標を計算してみると面白いかもしれません。